ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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春が待ちきれなくて〜最下位確定の夜、悲壮感なし

●1-6DeNA(24回戦:横浜スタジアム)

 我々は今夜、高橋宏斗が打ちのめされる光景を初めて目にしたことになる。5回6失点。エラー絡みとはいえ、4点を失った5回表の投球は集中力が切れ、ボールが制御できていないように見えた。これまで驚くべき安定感を維持してきた高橋が、このような状態になるのも19度目の先発登板で初のことだ。

 DeNAとは今日の対戦が6度目となる。1勝3敗(試合前時点)と負けが先行するが、言うまでもなく味方の無援護に泣いた結果である。32.1イニングに投げて防御率1.95、奪三振率10.86、WHIP(イニングあたりに何人走者を出したかを表す指標)は驚異の0.93を記録する。

 DeNAとて、ハタチになったばかりの若者にそう何度もやられっ放しでシーズンを終えるわけには行くまい。意地だけで結果が出せる世界ではないが、7度も対戦すればさすがに攻略されても不思議ではない。まして今夜の高橋は、自身初の中6日でのマウンドである。1年間の疲労と共に、慣れない調整に本来の力を発揮できないのはむしろ自然なことだ。

 さて、これをもって高橋宏斗の2022年シーズンが終了した。昨季は一軍マウンドを踏むことなくフェニックスリーグへと飛び立ったが、116.2イニングを投げた今季はおそらく休養優先という流れになるだろう。投げ抹消をはじめ諸々の配慮もあったとはいえ、高卒2年目にしてこれだけの実績を残そうとは誰が想像しただろうか。

 当初はこの時期に一軍初先発を経験し、本格化するのは来季以降と思われていたが、1年も2年も前倒しで覚醒したことになる。それも想像以上のハイクオリティで……。高橋の覚醒は来季のローテ編成のみならず、ドラフト戦略にも影響を及ぼすと考えられる。まさにチーム作りを根底から変え得る存在になったわけだ。

 ビッグボスあらため新庄剛志監督は、昨夜のセレモニーで高らかに来季開幕投手を発表した。ならばドラゴンズはどうか。まだ対戦相手も使用球場も明らかになっていない中で早計ではあるが、現状では大野雄大、小笠原慎之介、そして高橋宏斗の三つ巴で間違いないだろう。このうち大野は開幕戦をやや苦手としていることから、状況次第では高橋の抜擢も十分あり得る。いや、それどころか今季後半戦の先陣を任せるなど期待の高さを考慮すると、本命は高橋だといっても過言ではあるまい。

体がデカくて朴訥フェイス 森博人の台頭も今季の収穫のひとつだ

 高橋は打たれた。だが、同じヒロトでも森博人はピシャリとDeNA打線を鎮めた。この森も今季きっかけを掴んだ投手の一人である。

 体がデカくて朴訥フェイス。時に帽子が脱げるほど躍動感ある投球は、いわゆる投げっぷりのよさを感じさせるタイプだ。昨季の終盤に才能の一端は垣間見せていたが、やや出遅れた今季は6月後半から一軍定着。その後もっぱら敗戦処理としてイニング跨ぎも厭わぬ便利屋を全うし、29試合登板で防御率2.76と一定の成績を残した。

 10月2日に控えるシーズン最終戦は根尾昂の先発初登板が予想されており、当然森もブルペンでスタンバイすることになるだろう。おそらく根尾は長くとも3回まで。となれば、点差の状況にかかわらず森が投げる可能性は高い。30試合登板を果たし、来季に弾みをつけたいところだ。

 2020年ドラフトの1,2位コンビが台頭した竜の未来は明るい。6年ぶりの最下位が確定した夜……にもかかわらず悲壮感が薄いのは、例年よりも若手の躍動が目立ち、タイトル争いを楽しめているからだろう。何しろ6年前の'16年は記者投票を含めてタイトルと表彰が一切なし。年末のNPBアワードでドラゴンズの選手が誰一人出席しないという屈辱を味わったのだ。

 感じるのは悲壮感よりも黄金期への息吹。まだ2試合残っているのに、もう春が待ち遠しい。

木俣はようやっとる (@kimata23) / Twitter