ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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白熱の接戦、からの異次元

○7ー5巨人(バンテリンドーム:6回戦)

 打ちも打ったり15安打7得点。『燃えよドラゴンズ!』の一節を借りるなら「僕もあなたも願って」いたような試合がようやくできた。

 何しろ初回から岡林勇希を3番に据えた新打線がつながっての4得点である。石川昂弥も昨日の汚名返上とばかりにマルチ安打、さらに細川成也は打率4割超キープの大活躍。お立ち台にも登ったこの若い3人が今季のドラゴンズを支えていくことになるのだろうか。

 指揮官が「今年は勝つためのメンバーを使います」と豪語し、開幕わずか2週間にして古株の高橋周平とビシエドの名前がスタメンから消えた。たとえ守備を含めた総合力で彼らに一日の長があろうとも、若さの躍動はチームに勢いをもたらす。勢いはやがて確固たる自信となり、勝ちを重ねるうちに本物の強さを身につけることになる。

 多少の粗には目を瞑ってでも若手を使うのは、かつて自身も似たような立場で指揮官に「使われた」経験を持つ立浪和義だからこそ。たとえ結果論だとしても、ドラゴンズが深刻な貧打で開幕ダッシュに失敗したという事実。そして若手の積極起用によって少しだけ息を吹き返し、反攻態勢が整いつつある現状。

 今のところ石川、細川を中軸に据えた今日のような打線が「勝つためのメンバー」ということになる。そしてきっと立浪監督も若手中心の打線に手応えを感じているのではないだろうか。とはいえ打線は水もの。寝て起きたら “笛吹けども踊らず” になっていてもおかしくない。

 そうなった時に今悔しい思いをしている高橋周平、ビシエドといった中堅組が今度は若手を救うような活躍をして、初めてチームの歯車はうまく噛み合いだすのだろう。

逃げども追いすがる巨人打線

 ただ、長年このチームを見てきているファンならば初回の4点で「勝った」などと早めの祝杯をあげるような軽率なマネはしなかったはずだ。むしろ4点取ったことで残り9イニングを逃げ切らなければならないのか……という妙な緊張すら感じたほどだ。

 どういうわけか巨人戦はもつれる。そして、こうしたパターンでの逆転負けを過去数年で何度味わったことか。

 2回表2死二塁。思えばこのウォーカーの2ランが接戦への号砲だったのかもしれない。逃げども追いすがる巨人打線の恐怖。一方、ドラゴンズも1点差となった直後の5回裏に追加点を取る粘りをみせる。ところが7回表に2死からオコエ瑠偉のソロで2点差に。

 さらに8回表、今度は清水達也がまたまた2死から走者をため、絶体絶命のピンチを迎えてしまう。

 この日の巨人の5点はすべて2死ランナー無しから奪ったもの。投手がホッと一息ついた、その間隙を突くかのような攻撃には、最下位といえども決してファイティングポーズを崩さない巨人の執念のようなものを感じた。このあたりはさすが巨人。腐っても巨人だ。

 2死満塁、カウント3ー0という崖っぷちまで追い詰められながら冷静さを失わずに無失点で帰ってきた清水の強心臓には感服せずにはいられない。決め球は高めの真っ直ぐ。あれをきちんとコントロールできるかどうかで一流かそうではないかが決まるといっても過言ではない。

杞憂だった

 しかしリードはわずか2点。ドラゴンズも6回以降はチャンスを生かせない場面が続き、もう一波乱あってもおかしくない展開だ。マウンドには背番号92、見下ろすように仁王立ちするのは守護神ライデル・マルティネス。

 めまぐるしく主導権が移り変わる乱戦。たとえライデルといえども安心できない展開だが、杞憂だった。この日、幾度となくやられた2死でも何ら変わりなく真っ直ぐをバシバシと投げ込み、最後は空振り三振でゲームセット。

 まるで一人だけ「流れ」とは隔絶された異次元に存在するかのような安定感で、3時間37分の熱戦に平然と終止符を打ってみせたのだった。やっぱりライデルはスゲェや。