ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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ホームランは偉大なり

○5ー2広島(バンテリンドーム:2回戦)

  悪いことは重なるものである。それにしても近年のドラゴンズはちょっと疫病神に愛され過ぎじゃあるまいか?

 開幕ダッシュでみごとにこけ、9試合目を終えた時点で借金は早くも5個。プロ野球の歴史上、借金9をこさえたチームが優勝した例は無いというから、2023年の我らがドラゴンズは開幕早々にして “リミット” 間近まで到達してしまったわけだ。

 人は不幸が続いたとき、自分より不幸な人間と比べて安心しようとする。今のドラゴンズにとっての精神安定剤は、昨季の阪神に他ならない。開幕からずっこけること9連敗。「うちは2個も勝ってる!」とポジティブになれると同時に、これだけ負けまくった阪神が秋には3位でフィニッシュしたという事実が前向きな気持ちを取り戻させてくれる。

 ところが野球の神様はそう簡単に中日ファンを安心させてはくれない。「体調不良」で先発登板を回避した大野雄大が、左肘の遊離軟骨除去手術のため8月復帰を目指して療養に入るのだという。

 今オフに手術する予定が、ここにきて肘が曲がらなくなるほど悪化したためやむを得ずの離脱。俗にいう「ねずみ」は野球選手の職業病なので仕方ない面はある。むしろ長期離脱の理由としてはマシな部類かもしれない。

 それでも、よりによってこの時期か……というやるせなさ。一夜明けて、今度はビシエド登録抹消の一報が飛び込んできた。幸い故障ではないそうだ。

 だからこそ「マジか!」である。

立浪監督のワンゲーム、ワンプレーに対する過剰反応が気になる

 複数年契約中の実績ある外国人が不調を理由に抹消となるケースは極めて異例。しかも昨日まで4番を打っていた選手だ。ここまで打点ゼロ。無死満塁で併殺を叩いた昨夜の凡退が抹消の決定打となったのは明らかだ。

 しかし統計学に基づくと、得点圏打率はいずれ平均打率に収束する。つまり得点圏打率などという概念はそもそも存在しないのだという。ましてや開幕間もない時期の「打点ゼロ」など神経質になるべき数字ではないはずだ。

 確かにビシエドの「ここぞ」での弱さは統計で測れるものではなく、成績と印象との乖離が激しい打者なのは認める。

 ただ、今回のビシエドの件に限らず立浪監督のワンゲーム、ワンプレーに対する過剰反応がちょっと気になる。

 たとえば4日のヤクルト戦で決勝点に繋がるエラーを喫したアキーノは、翌日4タコに倒れると次戦にはスタメンから名前が消えていた。打てない、守れない選手を使い続けるわけにはいかんという判断なのだろうが、貧打解消のために獲ってきたスラッガーを開幕6試合目で引っ込めるのはどう考えても早計だ。

 ここで頭に浮かぶのが、もしあのエラーがもっと気楽な場面で出たプレーだったら果たして同じ判断を下したのだろうか? という疑問だ。

 なまじ負けに直結するエラーになったせいで、必要以上に神経質になった側面がある気がしてならない。昨夜のビシエドの満塁ゲッツーもそう。リードしている状況でのダメ押しならずといった凡退なら、今日の抹消も無かったのではないか。私はそう推測する。

貧打解消のために獲ってきた助っ人を使わないでどうするの?

 ビシエド抹消の判断が吉と出るか凶と出るか。それはまだ分からないが、勝てない焦りが過剰な即断即決を生んでいるのはたぶん間違いない。「泰然自若」とか「動かざること山の如し」といった慣用句とは真逆のムーブを見せる立浪ドラゴンズにとって、いま必要なのは勝つこと。ささくれ立ったファン感情共々、一旦腰を据えて冷静になるためにも勝利こそが何よりの薬になる。

 その意味で今夜の6日ぶりの勝利はとても有意義なものになった。4番に座ったアルモンテ、そしてアキーノにも待望の一発が生まれ、ドラゴンズは今季初めて「昨年にはなかった」一発攻勢での勝利を収めたのである。

 やはりホームランは偉大だ。ヒットを重ね、策を弄し、どうにか1点取れるかどうかの “スモールベースボール” を嘲笑うかのように、たった一振りでスコアボードに得点が刻まれるのだから。

 貧打解消のために獲ってきた助っ人を使わないでどうするの? というわけで、多少の守備難に目を瞑ってもアキーノは2軍調整なんかさせず1軍で使い倒してナンボだと私は思うのである。