ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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天才どころの話じゃない〜岡林勇希 タイトル挑戦へ

○7-1巨人(25回戦:バンテリンドーム)

 立浪ドラゴンズの初陣は、ちょうど半年前の巨人戦だった。3月25日の東京ドーム。奇しくも先発は大野雄大と菅野智之。新しい時代の幕開けに胸躍らせたのも遠い過去のようだ。あれから半年、ドラゴンズは最下位という順位でホーム最終戦を迎えることになった。

「秋からもう1回出直します」。試合後、満員の観衆の前で再出発を誓った立浪監督の顔にはシワやほうれい線がくっきりと刻まれ、髪にもずいぶん白いものが目立っていた。まるで玉手箱を開けた浦島太郎のような急激な変化は、それだけ強いストレスの表れでもあろう。

 プロ野球監督は男が憧れる三大職業のひとつだとも言われる一方、半年で10歳分も老けこんでしまうほどの激務でもある。かつて「プリンス」と呼ばれた立浪にも、負ければ容赦ない野次や罵倒が飛ぶ。高校時代から常に熾烈な競争の中に身を置いてきた立浪とて、見た目が変わってしまうほどの厳しい毎日とは……。常人には想像すらできない世界である。

岡林 タイトル射程圏に

 だが決して悪いことばかりのシーズンではなかった。ポジティブ要素の代表格が岡林勇希の存在だ。2022年は岡林の台頭だけでもお釣りが来るシーズンだった。とまで言い切るのはさすがに極端だが、それくらい背番号60の躍動はファンの希望であり、チームの未来そのものでもあった。

 先日の福留孝介引退セレモニーでは大野雄大、大島洋平と並んで花束贈呈役に抜擢され、その試合で猛打賞を記録したのも象徴的だった。思えば半年前、2番スタメンを勝ち取った開幕戦でも猛打賞の活躍。あの時は「やるじゃん、岡林!」「このままレギュラー奪おう!」なんて盛り上がったものだが、まさかレギュラーどころか最多安打のタイトルまで射程圏に収めるなんて、いったい誰が想像できただろう。

 いや、正直2週間くらい前までは考えてもいなかった。まずは3年目の立浪に並ぶシーズン150安打を何とか……と思っていたら、猛打賞、マルチ安打であっさりクリア。さらに今日もマルチ安打で一気に154本に伸ばし、阪神・近本光司、中野拓夢を抜いてシーズン安打数単独トップ浮上である。

 ライバルも多く、予断を許す状況ではないものの、タイトル争いの経験そのものが大きな自信になるはずだ。もちろんこのまま射止めてしまえば、岡林はタイトルホルダーとして一流選手の仲間入りを果たすことになる。そんな未来が間近に迫っているのだ。「消化試合」だと気を抜いて見ている場合じゃない。

谷元 満塁また鎮火

 本拠地最終戦。7-1というスコアだけ見れば楽勝にも思えるが、実は紙一重の勝利でもあった。

 リードを5点に広げた直後の6回表。それまで非の打ち所がない投球をみせていた大野が、突如として崩れ始めたのだ。1死満塁から中田翔にタイムリーを浴びて1点を献上。にわかに雲行きが怪しくなると、立浪監督はここで大野をあきらめて谷元圭介を投入。一発出ればたちまち同点という局面で、迎えるは5年連続30ホーマーの岡本和真。追いつかれさえしなければオーケーという場面だが、この谷元は1点すら与えず戻ってくるのだから素晴らしい。

 その仕事ぶりたるや最敬礼ものだ。最終戦ということで割愛されたヒーローインタビューがもしあれば、間違いなく谷元が選ばれていただろう。そして、ここでも光ったのが岡林だった。岡本のセンターフライは犠飛には十分かと思われたが、三塁ランナーの坂本勇人は自重。今やその強肩は広く認知され、抑止力として機能していることがはっきりと分かった。

 攻走守、全てにおいて天才ぶりを発揮した3連戦が終わり、シーズン残り5試合はタイトルを懸けた戦いとなる。

木俣はようやっとる (@kimata23) / Twitter