ちうにちを考える

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天才・岡林勇希、再びの栗林攻略

◯5-3広島(24回戦:マツダスタジアム)

 出てくる選手というのは、さほど時間をかけなくてもきちんと出てくるものだ。言うまでもなく、岡林勇希のことである。

 5打席目まで併殺打を含む無安打といいところのなかった岡林だが、11回表に絶好のチャンスで6打席目が回ってきた。2死一、二塁。とはいえマウンドに仁王立ちするのは守護神・栗林良吏。そう簡単に打ち崩せる相手ではない。ただ、この回先頭の高橋周平に9球粘った末に四球を与えるなど、さしもの栗林といえどもイニングまたぎの影響は少なからずチラついていた。

 直前の大島洋平に対しても変化球を叩きつけ、捕手が身を挺して止める場面もあった。結局これでカウントを悪くし、大島を申告敬遠せざるを得なくなったわけだ。この日マルチ安打の大島と、5タコの岡林を天秤にかけ、佐々岡監督は後者を選択した。現時点での打率も、これまで積み上げてきた実績も大島の方が上だから、妥当な判断であろう。

 しかし広島ベンチは、ここぞでの岡林の集中力の高さまでは計算できていなかったようだ。少なくとも前打者を敬遠して勝負するような打者でないことをドラゴンズファンは知っている。その2球目、インローに食い込むカットボールを払うように捌くと、打球はレフト線に落ち、二塁走者が一気に生還。二塁ベース上で得意げにガッツポーズをみせる岡林と、呆然自失といった様子の栗林。ちなみに栗林が自責点を喫するのは6月26日以来のことだ。

 まさに難攻不落と呼ぶにふさわしい守護神を打ち砕いての勝利……。思い出すのは開幕間もない4月2日のことだ。あのときは1点ビハインドの劣勢を跳ね返し、12回裏に大島のタイムリー、そして岡林のサヨナラ打で栗林に土を付けたのだった。

岡林がいなかったらと思うとゾッとする

 今季、栗林から2打点をあげたのは全球団で岡林ただひとり。5ヶ月前の岡林はまだ無名だったが、今や立派なヒットメーカーとなり、クラウン賞優秀選手に選ばれるまでに成長した。“天才” の異名が示すとおり、1年目からその成長スピードの速さには目を見張るものがあった。しかし、ここまで急激に伸びるとは、開幕当初に『文春野球』にて岡林愛に満ちたコラムを掲載したスポーツ報知・長尾記者でさえも予測していなかったのではないか。

 なにしろ欠場は1試合のみで、一流打者の証ともいえる150安打達成も残り10試合で6安打と現実味を帯びつつある。思い通りに行かないことだらけの立浪監督初年度だったが、岡林がレギュラーを掴んだという事実だけでも「意義のあるシーズンだった」と、後々振り返ることになるかも知れない。

 開幕前から立浪監督は石川昂弥、鵜飼航丞、そして岡林という若手3人の積極起用を明言。なかでも岡林は開幕戦で猛打賞を記録するなど、早々と頭角を表した。残念ながら石川、鵜飼は道半ばで離脱したが、岡林だけは期待に応え続けた。もちろん途中、調子を落とすことはあったが、そこから再びV字回復を果たすのが岡林の非凡さの表れである。

 もし岡林がいなかったらと思うとゾッとする。苦境のドラゴンズに輝く太陽のような存在……。岡林は尊くてエモいのだ。

木俣はようやっとる (@kimata23) / Twitter