ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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崩した相性、崩れた相性

○3-1巨人(21回戦:東京ドーム)

 誰にだって相性の良し悪しがあるが、それはプロ野球選手とて例外ではない。ただし彼らの場合はグラウンドでのコミュニケーション、すなわち対戦成績という形で表れる。

 古くは1998年、川上憲伸が同じルーキーの高橋由伸を相手に22打数1安打とほぼ完璧に封じたことがあった。シーズン成績は両者互角ながら、この “直接対決” の戦績が決め手となり、川上が新人王を受賞。圧倒的な人気を誇る巨人の新スターを破っての受賞は、中日ファンに大きな希望と勇気をもたらした。

 一方、その川上がプロ生活を通じて苦手としたのがヤクルト時代のアレックス・ラミレスだ。最優秀防御率を獲った'02年でさえ4ホーマーを浴びるなど完全にカモ扱いされており、通算被打率も4割超とまさに天敵。川上自身はYouTubeチャンネルにて「真中(満)さんが一番イヤだった」と暴露しているが、数字だけ見ればラミレスに軍配が上がる。

 といった風に、すぐ昔話に脱線したがるのが当ブログの悪い癖であるわけだが、そろそろ今の話をしたいと思う。

 この日までに巨人戦は8勝12敗と4つの負け越し。そんな中で3試合に登板して1勝1敗の大野雄大は、まずまず健闘していると言えるだろう。

 6月17日の登板では8回3安打無失点のすばらしい投球を披露。今夜はそれ以来の巨人戦登板だが、少し気になるのがポランコとの対戦成績である。実に9打数7安打(打率.785)と打ち込まれており、大野が5打席以上対戦した打者の中で最も高い被打率となっている。それも長打なし、全て単打だというから不可思議だ。開幕戦では3打席連続ヒットを浴び、そのうち1本は決勝打にもなった。

 派手にやられているわけではないが、なぜか抑えられない。大野にとってポランコは間違いなく気持ちの悪い存在であるはずだ。しかしながら今夜はひと味違った。2回裏、無死三塁という極限の状況で大野はギアを一段上げ、本気でポランコを抑えにいったのだ。2-2からの5球目、高めの釣り球を振らせて苦手を克服。さらに4回裏には併殺、7回裏にも今度は見逃し三振を奪い、この日は完膚なきまでに天敵のバットを封じ込めた。

 さすがに4度目の対戦ともなれば、そういつまでも打たれるわけにはいかない。そんな沢村賞投手の投球に、プロの意地を見た気がした。

崩れた相性 ライデルまさかの被弾

 球数も嵩んでおらず、大野に完封を狙わせるかと思われたが、ベンチはジャリエル、ライデルの必勝リレーを選択。だがこれが思わぬ波乱を呼ぶことになろうとは……。

 9回裏、先頭は丸佳浩。リーグ屈指の強打者ながら、ライデルにとっては安パイも安パイという意外な側面がある。何しろ来日以来、両者の対戦成績はとにかくライデルが圧倒。前回まで通算13打数無安打12三振という目を疑うような数字を残している。

 ヒットどうこうではなく、バットにすら当たらない。おそらく丸にとって世界で一番打ちにくいボールこそが、このライデルの投じる豪速球と落差のある変化球なのだろう。

 したがってこの日の対戦もすっかり安心しながら眺めていただけに、打球がバックスクリーンに弾んだ瞬間は唖然としてしまった。ストレートを2球続けたあとのスプリットが真ん中に入ったので、失投ではある。

 しかし、これまで一貫してノー感じだった打者が、数少ない失投が来たと見るや一発で仕留めてしまうとは……。さすがは丸。これもまたプロの意地と呼べるものであろう。

 ゲームは延長10回、意外な形で決着が付いた。犠打野選とスクイズという、相性関係なしの奇策で大勢を攻略。ここまでは分かるが、ビシエドのタイムリーでさらに加点した後、1死一塁で木下拓哉にも犠打をさせたのはさすがに笑ってしまった。

 執拗なバントの乱れ打ちは、まるで10年前の名電を見ているかのようであった。よーし、来年の新ユニフォームは紫にしよう。

木俣はようやっとる (@kimata23) / Twitter