ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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がんばれ中スポ!〜西日本スポーツ発行休止の衝撃

●2-4広島(21回戦:バンテリンドーム)

 西日本スポーツが来年3月末で紙面発行休止へーー。日本列島を駆け巡った衝撃の一報はたちまちトレンド入りし、多くの野球ファンを動揺させた。

 古くは1950年に一年間だけ「西日本パイレーツ」というプロ球団を持ったこともある老舗中の老舗。その後は長きにわたり西鉄ライオンズの報道を主軸に据え、'89年の福岡ダイエーホークス誕生以降は一貫してホークス情報に力を入れてきた。まさしく九州におけるプロ野球の歴史そのものとも言える存在だ。

 その西スポが、他誌に先んじてウェブ一本化を図るという。新聞絶滅の危機が叫ばれるようになったのは何もここ数年というわけではなく、既にゼロ年代の半ばにはそうした予測が「いずれ来る未来」として語られていた。15年ほど前のことなのでソースは失念したが、たしか2012年には紙の新聞は完全に消え失せるだろうという内容だったと記憶している。

 その予測から考えると、むしろよく持った方だと言えるのかもしれない。ただし今回の “西スポショック” に端を発して、各紙が堰を切ったように追従する流れはもはや避けようがないだろう。スポーツ紙市場は20年前に対して6割減、10年前と比較しても4割減と、他の紙媒体と比べても急激な衰退を続ける “超斜陽産業” である。

 西スポが4月以降にどういった形でウェブ媒体に移行するのかは不明だが、仮に一定の成功を収めた場合、紙のスポーツ新聞があっという間に絶滅する可能性は大いにあり得る。

 かつては通勤電車といえば、半分折にした日経新聞やスポーツ新聞とにらめっこするおじさん達の姿が朝の風物詩でもあった。やがて「新聞に目を通さなきゃ一日が始まらん」という世代が定年を迎えると、入れ替わるようにしてスマホが普及。今では白髪の老紳士が「ウマ娘」に興じる姿もちらほら見かける。日本の日常風景は、スポーツ新聞の衰退と共にすっかり様変わりしたのである。

紙面でしか味わえない骨太な記事を求めたい

 そうなると、オレたちの中日スポーツだって他人事ではない。東海地区という大産業圏を包括している強みはあるものの、昔の紙面と比べて広告出稿量があきらかに減少しているなど、苦境は目に見える形で表れている。

 現在はトーチュウのみ電子版で購読することができるが、この先中スポもデジタル化に踏み切るのは時間の問題。現に今も「龍の背に乗って」をはじめとした記事のほとんどが無料でウェブ公開されており、私も半ば “お布施” のような気分で購読料を支払っているのが率直なところだ。

 一部の熱心なファンの購読料よりもYahoo!ニュースからの流入によるPV数に旨みを感じるならば、ビジネスとしてはそれが正解なのかもしれない。ただ、いわゆる “引き” の強い見出しほど客を呼び込むネットメディアの特性ゆえに、ウェブ化が進むと試合の本質とは異なる箇所ばかりをフォーカスしがちになるのではという危惧もある。

 この日の試合でいえば、根尾昂の1死満塁零封がそれにあたる。たしかに快哉を叫びたくなるような熱投ではあったが、結果的には勝利には結びつかず、試合全体をみれば柳裕也のノックアウトや打線の不甲斐なさの方が本来取り上げるべき要素であろう。それでも明日の中スポは一面で根尾をフィーチャーすると私は予想する(ハズレたら謝る)。

 そりゃ負け試合を鬱々と振り返るより、少しでも明るい要素を取り上げたい気持ちは分かる。「根尾」の二文字を見て記事をタップする読者は相当数いるようで、色々なメディアのランキングでも根尾に関する記事は上位に食い込んでいることが多い。というか、PVを稼げるドラゴンズの選手が根尾しかいないと言うべきか。

 だからこそ中スポでは、紙面でしか味わえない骨太な記事を求めたいのである。どのみち根尾の投球は各所で散々拡散され、明日の朝、新聞が届く頃には鮮度が失われているはずだ。そこでもし一面が「石垣 めげるな! 振りまくれ!」とかだったら……多少なりとも「おっ」と思うし、ニヤリとしてしまうだろう。一面という概念のないYahoo!ニュース(をはじめとしたプラットフォーム)では味わうことのできない楽しさだ。

 この先も新聞の電子化は抗えない流れではあるが、スポーツ新聞ならではの派手な見出しや遊び心のある構成は、絶えさせてはならない一種の文化だと思っている。紙が難しくても、せめてデジタル版でこの文化は継承していってもらいたいし、そのためには課金してでも読みたいと思わせるような、趣向を凝らした紙面作りというのも重要になってくるのではなかろうか。

 あまり書くと懐古老人のようでイヤだが、昔の中スポは今よりずっと刺激的なコンテンツだった。もう一度「やるじゃん、中スポ」と思わせてくれるような記事が読みたいと、いちファンとして切に願う次第である。

木俣はようやっとる (@kimata23) / Twitter

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