ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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突然の雨に打たれて〜上田洸太朗の強さと、ドラゴンズの弱さ

●0-7DeNA(19回戦:横浜スタジアム)

 雨曝しの横浜はどう考えても試合を続行できる環境ではなかったが、“大人の事情” というのはどんな時でも無理を押し通すものだ。計60分に及ぶ2度の中断を経て再開のコールがかかったとき、時計の針は既に19時を回っていた。

 この調子だと試合終了は22時過ぎ。ブログを書き終えたら23時かぁ。「ジョジョ」6部を見るのは明日に延期かな……という私個人の都合なんかどうでも良くて、心配だったのは上田洸太朗の肩である。まだ19歳の上田にとって、これだけ長い中断は人生を通して初めての経験だったに違いない。

 再開と中断を繰り返す不規則な状況で、約55分間の中断を経て再度プレイボールがかかったのは2回裏、1死一塁という局面だった。それも対峙するのは昨夜本塁打を放ったソトである。デリケートな投手なら制球を乱したり、勝負に集中できなくてもおかしくない。ところがこの上田は例によって平然と、顔色ひとつ変えずに投げることができるのだ。

 まずはソトを外から食い込むカットボールで三振に打ち取ると、続く大和はアウトローに沈むチェンジアップで料理。まるで中断など最初から無かったかのような投球で、見事に不安を払拭したのだった。マジメゆえに入念な準備を怠らなかった結果なのか、あるいは鈍感ゆえの強さなのか。

 まだ上田という若者の性格をしっかりとは把握していないので何とも言えないが、どんな状況下においても飄々と投げられる芯の強さは、日本シリーズのような大舞台向きの性格だといえよう。

 ドラゴンズの技巧派サウスポーといえば山本昌。その山本がキャリア22年間で一度たりとも日本シリーズで白星を挙げられなかったのは有名な話だ。上田もまた体格の良さとセンスは山本にも引けを取らないものを持っている。だが、上田がまず目指すべきは日本シリーズではなくシーズン初勝利。道のりは険しいが、最終的には山本と同じ219個勝ってもおかしくないだけの素質は秘めていると感じる。

 この日は6回4失点と粘ることはできなかったが、あれだけ鬱陶しい雨と二度の中断にもかかわらず6イニングを投げ切っただけでも、及第点を付けてもいいのではないだろうか。高橋宏斗と共に2020年代のドラゴンズを支える投手になるだろうという予感は、また一歩確信に近付いたのだった。

聞きたいのは言い訳ではなく……

 それにしても打てない。シーズン終盤を迎えて打線の深刻さは増す一方だ。この日はレビーラを3番に据えるなど立浪監督なりに試行錯誤は伺えるものの、「代わりを打つ打者がいない」がために大不振のビシエドを4番に置かざるを得ない状況が、根本的な戦力不足を物語る。

 ただでさえ選手層の薄いところにきて、石川昂弥、鵜飼航丞、アリエルという “パワーヒッター三勇士” の離脱というダブルパンチが壊滅的なダメージをチームにもたらした。慌ててワカマツ、レビーラ、ガルシアという育成外国人を相次いで昇格したものの、付け焼き刃の対策が通用するほど甘くはなく、現時点で長打を期待できる選手は8本塁打の阿部寿樹のみという貧弱ぶりだ。

 それに加えてビシエドの想定を超える不振。これだけ不運が重なれば、“ドン鶴岡” こと歴代最多勝利監督・鶴岡一人とてチームを勝たせるのは至難の業であろう。

 一体何がここまで歯車を狂わせてしまったのだろうか? 思うに、近年のドラゴンズのチーム作りは希望的・楽観的観測に依りすぎているのではないか。ビシエド40本塁打、京田陽太トリプルスリーを筆頭に、「きっと〜してくれるだろう」という甘い見込みに頼り、補強や育成ドラフトに参戦すらしない企業姿勢は怠慢と指摘されても仕方がない。

 ……と、まだ9月になったばかりだというのにオフモードの総括に入るのは寂しい限りだが、このオフにやるべきことは明確に見えている。ファンが聞きたいのは円安だの球団資金云々という言い訳ではなく、「メジャー級助っ人獲得」の一報、ただそれに尽きる。

木俣はようやっとる (@kimata23) / Twitter