ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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つれない夏の終わり〜本塁打0、怖くない4番打者

●2-3DeNA(18回戦:横浜スタジアム)

 夏の終わりはなぜか切ない。あんなに鬱陶しかった猛暑も、寝苦しい夜も、今となっては少し懐かしい気さえする。毎週のように通った市民プールは一年間の閉園に入り、明日の朝には通勤電車も学生でごった返す日々が始まるのだろう。

 いつのまにか夜になると鈴虫の鳴き声が聞こえるようになった。コンビニのお酒コーナーには秋限定ビールが並んでいる。こうした日常の些細な変化から季節の移ろいを感じられるのは、四季折々を持つ日本ならではの光景と言えるのかもしれない。

 今年は3年ぶりに開催された祭りに出かけたという人もたくさんいることだろう。賑やかな祭囃子の音色を聞き、ようやく日常が少し戻ってきたなぁと柄にもなく感慨に耽ったりもした。祭りも終わりに近付いた時、ドーンという音ともに、大歓声が響きわたる。スイカを頬張る子供たち、初めてのデートと思しき中学生カップル、うちわを仰ぐ法被姿の旦那衆。その瞬間、誰しもが夜空を見上げ、恍惚とした表情を浮かべていた。

 やっぱり夏は花火だ。とりわけ打ち上げ花火は最高だ。色とりどりの花火が夜空に舞うだけで、みんな幸せになれるのだ。花火のない夏なんて……ってあれ? そういえば今年、花火見たっけ?

 うん、見てない。見た気がするのは、たぶん村上宗隆の打ち上げた花火だろう。なんたってビシエドが8月に打ち上げた本塁打はなんとゼロ。牧秀悟も本拠地5試合連発を決めるなど、空前の主砲時代に突入しつつあるセ・リーグにあって、圧倒的に遅れを取っているドラゴンズが最下位から抜け出せないのは自然の理であろう。

怖くない4番打者

 8月最終日となったこの日。「不動の4番が月間0本塁打」というシャレにならない事態は現実のものとなってしまうのか? という、ビシエドの打席は密かに今日のゲームの注目点でもあった。

 全野球ファンが固唾を飲んで見守る大谷翔平の30号チャレンジや、村上の50号チャレンジに比べればスケールが2回りも3回りもショボいが、これが今のドラゴンズの現状だ。どうだ、笑うがいいさ。

 本塁打だけではなく、長打も打てなくなってしまったビシエドはもはや “主砲” とは呼べないのではないだろうか。という真っ当な疑問は置いておいて、今日も指定席の4番にドッカリと腰を据え、4タコをかましてしまうのだから深刻さは増すばかりだ。

 1点を追う8回表、1死一塁で打席にはビシエド。もし今月第1号が飛び出せばたちまち逆転という局面で、対峙するは伊勢大夢。このまま9回を迎えれば難攻不落の山崎康晃が出てきてしまうため、ドラゴンズにとってはここが実質的な最後のチャンスでもある。

 5番の阿部寿樹は先制弾を放った。あとはもう4番が打つだけだ。さあ頼むぞ! という願いも虚しく、ビシエドはあろうことか3球三振を喫したのである。見逃し、見逃し、空振りーー3球ともゾーン内で勝負されたのが、いかに相手方からして「怖くない」のかを物語っている。村上や牧が打席に立ったときに感じるあの威圧と恐怖を、ビシエドは相手方に全く与えることができていないのだろう。

 特にDeNAは、つい先日村上に蹂躙された記憶が生々しく残っているはずだ。ここぞで絶対に打つ村上との死闘を繰り広げた立場からすれば、同じ4番でもビシエドはイージーモード扱いされてもおかしくはない。

 結局、今年のドラゴンズは「4番の一発」を見ないまま夏を終えることになってしまった。風情も何もない、つれない夏である。

木俣はようやっとる (@kimata23) / Twitter