ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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表情観察〜三好大倫、淡々と三塁打を放つ

○6-1広島(20回戦:MAZDA Zoom-Zoom スタジアム 広島)

 最近はプロ野球を楽しむにも映像は観ずに、スポナビの速報だけで済ませるというスタイルも定着しつつあるように思う。会社帰りの通勤電車、隣の席のサラリーマンがスポナビ速報をチェック……という場面にしばしば遭遇する。

 ひいきのチームが勝っていれば帰宅してから中継を観たり、夜のスポーツニュースを梯子するのも乙なものだが、ボロ負けでもしようものなら観る気も起こらないのが普通の感覚だと思う。私はブログを書いている手前、どんな試合でも一通り映像をチェックするわけだが、確かに負け試合を観るのは苦行に近いものがある。

 ただ、勝とうが負けようが「選手の表情」というのはテキストからは伝わってこない、映像ならではの要素であろう。今夜の試合でも、表情を通して選手の悲喜こもごもが実によく伝わって来た。

三好大倫の淡々とした表情が、逆に味わい深かった

 たとえば初回、2死一、二塁から貴重な追加点となるタイムリーを放った三ツ俣大樹は塁上で手をバシバシと叩いたあと、「やったぜ」というような表情で控えめに笑顔を作った。ここのとこ少し影の薄くなりつつあった職人だが、久々にいい仕事をした。そんな充実感が滲み出た表情である。

 5回表は土田龍空が右足爪先に死球を受けて悶絶。タンスの角にぶつけるだけでもあれだけ痛いのだから、140キロの硬球がもろに直撃する痛みとはどれほどのものか。塁上でもクシャっと顔をしかめていたのを見ると、やはり相当な痛みがあったようだ。それでも治療やコールドスプレーは断り、何事もなかったかのようにプレーを続けるあたり、レギュラー奪取のためには痛い痒いなどとは言ってられないという覚悟を垣間見た気がした。

 続いておもしろい表情を見せてくれたのは、6回裏の松葉貴大だ。無死一塁から矢野雅哉の打球は投ゴロとなり、誰もがゲッツーだと思った次の瞬間、土田の送球が逸れて一塁アウトを取り逃がしてしまった。悔しそうに天を仰ぎ、今度は別の意味での「痛さ」に顔をしかめる土田。この土田という男は感情がもろに顔に出るので、見ていて本当に楽しめる。京田陽太のようなポーカーフェイスも味わいではあるが、やはり中日というチームにはこういった “熱い男” がよく似合う。

 さて、このプレーが出たとき松葉がどんな表情を見せたのかと言うと、「マジかぁ」という声が聞こえてきそうなほど、あからさまにガッカリした面持ちで両手を膝についたのである。このイニングを凌げば勝利投手の権利をもって仕事を終えることができるだけに、思わず本心が出てしまった感じか。ただ、すぐに引き締まった表情に切り替えて後続を断ち切るのはさすがベテランといったところ。スリーアウトを取り、笑顔で土田とグラブタッチしていたのも微笑ましかった。

 そして9回表、ダメ押しの足がかりとなる三塁打を放った三好大倫の表情もまた、味わい深いものがあった。二塁を蹴ったところで外野手の動きを見ると、歯を食いしばって全力疾走。一気に三塁を陥れたわけだが、意外にも笑顔はなく、淡々としていたのが印象的だった。

 プロ通算4安打目。社会人経由であることを考えれば、決して長い猶予があるわけではない。これで浮かれている場合じゃないぞーー勝手な想像ではあるが、あの表情にはそんな決意がこめられているようで、なんだかとても頼もしく見えた。

 最後はベンチ、ナイン全員の笑顔で締めることのできた今夜のゲーム。だが、私は知っている。このチームで最も笑顔が可愛いのがレビーラであることを。滅多に笑わないのもまた趣きである。

木俣はようやっとる (@kimata23) / Twitter