ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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悲壮感すら漂わせ〜柳裕也の苦悩

●0-5広島(18回戦:MAZDA Zoom-Zoom スタジアム 広島)

 どうにもこうにもピリッとしない。今季の柳裕也の投球である。京セラドームでは若手の躍動で阪神をスイープし、3連勝で迎えるは敵地の広島戦。実は立浪ドラゴンズは「4連勝」が壁となっており、今季は4月に二度(1〜5日、7〜14日)記録したのを最後に、3連勝での “打ち止め” が続いている。

 借金を少しでも減らすためにはカード勝ち越しを続けるか、大型連勝するかの二択に絞られる。そのどちらもできないから最下位に甘んじているわけだが、ここにきてチーム状態は上がってきており、今度こそは4連勝行けるぞと。これを足掛かりに我が軍も待望の大型連勝に突入だぞと。大きな期待をもって臨んだ……はずの一戦だった。

 柳としても前回登板では悪いなりに2失点にまとめ、1ヶ月ぶりの勝ち星を手にしたばかり。ここで後輩を倒せば尚のこと勢いづき、二桁勝利と最多奪三振のタイトルも見えてくる重要なマウンドになるはずだった。ところが……勝負はわずか1球で決まってしまった。比喩ではなく、文字通りの1球目だ。初回、先頭・堂林翔太への初球は真ん中高めのストレート。142キロという球速といい、酷な表現になるが「打ってください」と言うような、まるで打撃練習のようなボールである。

 こんなチャンスボールを見逃してくれるほどプロ野球の打者は甘くはない。バット一閃、瞬く間に白球はレフトスタンドへと消え、結果的にこれが決勝点になるのだから、とにかく呆気ない。さらに2回裏には伏兵・矢野雅哉にプロ初本塁打を献上。5回裏にも堂林にこの日2発目を浴び、通算4度目の先輩後輩対決は一方的な形での柳の惨敗となったのだった。

岡本、中田翔の2者連発で始まった柳の2022年シーズン

 ベンチの片隅には唇を真一文字に結んだ、虚な表情の柳がいた。こんなはずはない、なぜ打たれるのかーー。苦悩が映像越しに伝わって来そうなほどの表情には、悲壮感すら漂っている。

 昨季二冠の栄光はどこへやら。今季の柳はとにかく「らしくない」投球が続いている。思えば開幕3試合目、東京ドームで巨人打線に打ち込まれたあの日から、苦難の道は始まったのだ。岡本和真、中田翔の2者連発で始まった柳の2022年シーズン。初回失点の多さも、被本塁打の多さも、あのイニングにこそ今季の不甲斐なさが凝縮されており、遂に修正することができずにここまで来てしまった。

 昨季はシーズン通算で11本だった被本塁打は、この日の3発で早くも15本に到達。村上宗隆や岡本といったスラッガーに打たれるのはともかく、今夜の矢野や巨人・増田陸のように、プロ初本塁打を献上するのはどう考えても柳らしくない。本来の柳ならば、実績のない若手などは軽く捻り潰せるはずだし、たとえ出会い頭の事故であっても、こう簡単に打ち返されるのはやはり不自然だ。

 色々な理由が考えられる。シーズン序盤の投球過多が疲労を招いている説、何らかの癖がバレていて、球種や配球が読まれている説。どちらもあり得る話だが、いずれにせよ打たれているのはことごとく高めの甘い球である。この日打たれた9安打はすべて、9分割したストライクゾーンの上6マスに入ったもの。柳といえば低めへの制球が生命線なので、これでは打たれるのも当然といえよう。

 ひょっとすると軽微な故障をきたしているのか。それとも意識の持ち方や練習によって改善できるものなのか。本当のところをファンが知る由はないが、これ以上暗い顔の柳は見たくない。えくぼを作り、誰よりも無邪気に勝利を喜ぶ、そんな柳が戻ってくるのはいつになるのだろうか。

木俣はようやっとる (@kimata23) / Twitter