ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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野球の華〜チームを救った土田龍空の好プレーと、レビーラの打球

○3-2巨人(15回戦:バンテリンドーム)

 以前から何度も書いているが、私はホームランテラス賛成派である。理由は単純で、その方が楽しいから。エンターテイメントは客を退屈させた時点で「負け」だと考えているからだ。

「ホームランは野球の華」とはその通りで、ファンの心に何十年も残る名場面というのはホームラン絡みのシーンがほとんどだ。ドラゴンズでいえば、落合博満が斎藤雅樹から打ったサヨナラ弾だったり、タイロン・ウッズの満塁弾だったり……。範囲をプロ野球に広げても、天覧試合の長嶋茂雄サヨナラ弾、WBCの「生き返れ、福留!」など、名場面はホームラン目白押し。

 ちなみに私自身、子供の頃に観に行ったナゴヤ球場の試合ではっきりと覚えているのは、すぐ近くに飛んできたコールズのホームランと、中村武志のホームランだ。他のシーンは時間の経過と共に色褪せてしまっても、ホームランだけは何年経っても鮮明に記憶に残っている。野球においてホームランというのは、どう考えても特別な存在だと思う。

 だからこそ、ファンの過半数がホームランテラス設置を望んでいないという事実には驚きを隠せなかった。8日放送の東海ラジオ『山浦ひさしのドラゴンズステーション』が実施したアンケートによれば、反対派55%に対して賛成派45%と、意外にも不要論が勝ったのである。これまで多数派ぶって設置を促してきたが、なんのこっちゃない実は少数派だったというわけだ。

 民主主義において世論は絶対だ。さもファンの総意であるかのようにテラス設置を希望するのも、今後は控えるべきかな……とか何とか思っていた矢先。今夜の巨人戦はまさにバンテリンドームならではの僅差の攻防戦となった。

レビーラの打球がスタンドインしなかったのは「ウソだろ」という気持ちが拭えない

 試合後のインタビューで立浪監督が「ウチらしい」と表現した1点差ゲーム。勝利の決め手となったのは、土田龍空の二度にわたる好プレーだろう。まずは初回、先頭・吉川尚輝のイヤらしい打球を背走でキャッチ。これが無ければ柳裕也の立ち上がりは1失点では済まず、序盤で試合が壊れていてもおかしくはなかった。プレイボール直後から集中力を研ぎ澄ませている事がうかがえる、大きなプレーだった。

 さらに5回表、無死一塁から岡本和真のセンターへ抜けようかという当たりを飛びついてキャッチすると、それを一旦落として一塁走者に進塁義務を発生させ、フォースプレーでゲッツーを取るという頭脳プレーを披露。これが故意なら天才だが、さすがに偶然の産物であろう。ただ、そもそも抜けていればピンチ拡大という打球をアウトにしただけでも十分な好プレーである。結果的に1点差勝利となっただけに、計り知れない価値のあるプレーとなった。

 7日の岡林勇希の2補殺もそうだが、この球場では「守り勝つ野球」が正攻法となる。堅守で相手の攻撃を阻み、強力なリリーフ陣で僅差を守り切るーーまさしく今夜は過半数のファンの望み通りの理想的な展開で進んだことになる。

 ただ、「ナゴヤ球場の中日」を未だに引きずっている厄介な古参に言わせれば、レビーラの第2打席の打球がスタンドインしなかったのは、どうしても「ウソだろ」という気持ちが拭えない。あれが入っていればもっと楽に勝てていただろうし、レビーラに2本目が出ることで、打線にも勢いが付くような気がする。

「ナゴヤじゃなければ余裕でホームラン」は、ドラゴンズ戦を見る上での常套句となっている。もしテラスが付けば、当たり前だが打たれる本数も増えるだろう。それでも「野球の華」を一本でも多く見たいというのが、私の正直な想いである。まあ、所詮は少数派の戯言だが。

木俣はようやっとる (@kimata23) / Twitter