ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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逆方向アーティスト〜一瞬声を挙げてしまった平田良介の右飛

●0-1DeNA(15回戦:バンテリンドーム)

 スポナビの「連載:2004年・新人監督落合博満」。第6回に登場した証言者は、当時スカウト部長を担当していた中田宗男。

 落合は自らが課すハードな練習に耐え得る選手を求めたため、必然的に発達途上の高校生ではなく、ある程度体が完成している大卒、社会人を指名するケースが多くなったのだという。

 2004年ドラフトではスカウト陣が推す「本命」に落合監督が首を縦に振らず、結果的に社会人の樋口龍美を1巡指名。12巡目まで大量11人を獲得し、全員が大社卒という極端なドラフトになったのも落合の意向が強く反映された結果であろう。

 しかし2005年からいわゆる分離ドラフトが導入されると、ドラゴンズは平田良介、堂上直倫、福田永将といった超高校級の野手を相次いで獲得した。特に平田は入団間もない段階で落合が「俺を超える打者になる」と豪語したほどの逸材で、入団2年目には早くも一軍定着。日本シリーズでは日本一を決める決勝犠飛を放つなど、大いに将来を嘱望されていた。

 その後は怪我などもあって苦しんだ期間も長かったが、2018年には自己最高の打率.329を記録。加えて守備ではゴールデングラブ賞を獲得し、2億円近い年俸を手にするなど、「一流」と呼んでも差し支えないキャリアを歩んできた。

 それでも……今回のインタビューで、中田の口から飛び出した評価は厳しいものだった。曰く、平田や堂上、高橋周平には「球界を代表する選手」になることを期待していたが、「彼らが残念ながらそんな選手になっていない現状が、チームの低迷に直結しているはずです。スカウトに携わる者として責任を感じますし、申し訳なく思っています」と、偽らざる本音を吐露しているのだ。

 あの日本シリーズの犠飛や、2011年に2試合連続サヨナラ弾という離れ業をやってのけた際の途方もない期待値からすれば、その後の実績は満足とは遠い距離にあるのは確かだ。本塁打のキャリアハイが15本というのも寂しいと言わざるを得ない。

 とは言いつつも、暗黒時代を大島洋平と共に背負って立った選手であることは間違いなく、今でも平田が打席に立つとスタンドからは温かい拍手が注がれる。幅広い年代のファンから愛されている選手の一人だ。

 だからこそ指名当時のスカウト部長が懺悔のような言葉を口にしたのは意外だった。そりゃ平田が3割30ホーマー打つような大打者になっていれば、“アフター落合” のドラゴンズの景色はずいぶん違ったものになっていただろう。でも……「チームの低迷に直結」ってのは、いささか厳しすぎる感じがする。

平田が最も得意とし、最も打球が伸びるコース

 互いに0行進が続く展開で、ドラゴンズがこの日5度目のチャンスを掴んだのが8回裏のことだった。連打で一、三塁とし、三ツ俣大樹の代打で平田が打席に立った。現状、福田永将と並び代打の切り札的なポジションを担っている。

 若手の積極起用を推し進める立浪政権下にあって、スタメン機会は今後も限られてきそうだが、豊富な経験に基づく配球の読みと勝負強さはまだまだチームには必要だ。事実、こうした場面で起用される事こそが、首脳陣からの期待の高さを物語る。

 この日打ったのは外角高めのストレート。平田が最も得意とし、最も打球が伸びるコースだ。いい感じに打球角度も上がり、打った瞬間は思わず声を挙げてしまったが、残念ながらウォーニングゾーン手前で失速。犠飛には十分な打球だっただけに、ツーアウトだったのが悔やまれる。

 それでも、あの当たりが打てている間は心配ない。スイングが強引になり、ぼてぼてのゴロを量産し始めたら要注意。今日のようにコンパクトに振って外野後方まで飛ばせているのは調子のいい証拠だ。

 かの有名な甲子園1試合3発も “昔話” になりつつあるが、若手には真似できない逆方向の伸びは健在。レビーラをフルイニング起用するのは現実的ではなく、岡林勇希も調子のムラが激しい面がある。となれば、平田に声がかかるのも時間の問題と見るが、果たしてーー。

木俣はようやっとる (@kimata23) / Twitter

【参考資料】

2004年・新人監督落合博満 - スポーツナビ