ちうにちを考える

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忘れ物と決別する夏

 104回目の夏がやってきた!

 開会式の入場行進はいつの時も特別だ。今大会はプロ野球選手とつながりのある選手が数多くいる。ドラゴンズファンから熱い視線を集めるのは、岩瀬仁紀を父に持つ岩瀬法樹(愛工大名電)だ。

 父とは異なる右投げだが、決め球は勿論スライダー。愛知大会・準決勝での好リリーフがなければ、愛知の名門が聖地の土を踏むことはできなかったかもしれない。

 甲子園では、リリーフ投手としてエース左腕・有馬伽久を助けることになるだろう。現在の高校野球では、ハイレベルの複数投手を擁することは勝ち抜く上で必須。上位進出した際は、重要な場面で登場することも大いにある。

岩瀬親子だけじゃない!

 元ドラ選手を父に持つ選手は北国にもいる。八戸学院光星の洗平歩人(あらいだい・あると)、比呂の兄弟である。珍しい名字にピンときた方もいることだろう。速球派左腕としてドラゴンズに逆指名で入団した洗平竜也が父にあたる。

 兄・歩人はエース右腕兼主将、弟・比呂は1年生ながらメンバー入りした左腕投手だ。青森大会の決勝では兄弟リレーを果たし、父が3年連続で敗退した決勝を突破した。

 兄弟同時出場といえば、藤川球児(元・阪神ほか)や杉谷拳士(日本ハム)らがいるものの、兄弟での継投となればレアケース。青森大会を豊富な投手陣の継投で勝ち上がってきただけに、実現する可能性は高そうだ。

 2012年、前身の光星学院は甲子園の決勝で春夏続けて大阪桐蔭の軍門に降った。その前年の夏も含めると3期連続決勝進出という偉業を成し遂げながらも、優勝旗を持って帰ることはできていない。

 それから10年、当時の宿敵は3度目の春夏連覇という大偉業に向けて歩みを進めている。八戸学院光星としては、豊富な投手陣で対抗したいところ。仮に洗平兄弟が大阪桐蔭に土を付けることがあれば、父の悲願どころか「白河の関越え」が見えてくる。

三冠目指す常勝軍団は今年も強い!

 21世紀の最強軍団は、過去2度の春夏連覇時に匹敵する陣容を揃えてきた。藤浪晋太郎(阪神)が大黒柱だった2012年は手も足も出させなかった。根尾昂を筆頭に巨大戦力を誇った2018年の布陣は、近代高校野球の一つの到達点となったといえよう。

 今年のチームは、秋の明治神宮大会も制しており、松坂大輔(元・西武ほか)を擁した1998年の横浜以来の「三冠」を視野に入れている。強肩強打の捕手・松尾汐恩は、捕手らしからぬスラっとした体躯。ドラゴンズの選手だと往年の中尾孝義といったところだろうか。1番打者を務める伊藤櫂人や、アスリート型外野手の海老根優大らで形成する打線は切れ目がない。

 強力打線に加え、今年は圧倒的な投手力を誇る。地方大会では7試合でわずか1失点。川原嗣貴を筆頭にエース級の投手がズラリと並ぶ。なかでも2年生左腕・前田悠伍は、早くも2023年のドラフト戦線の主役候補だ。

 ストレート、スライダー、チェンジアップのコンビネーションだけでも高校生レベルを超越しているが、左打者の内角を突く制球力も兼ね備える。さらに、フィールディングや牽制も申し分なしと隙が見当たらない。

呪縛からの解放

 思い返せば、父・竜也のプロ生活は苦しみ続けた3年間といって過言ではない。初めての春季キャンプではいきなり一軍に抜擢。しかしキャンプ初日にブルペン入りして以降、脱出方法の分からない袋小路に迷い込んでしまった。

 時は流れて2022年。二人の息子の勇姿から、堪能することができなかった「ドラゴンズの洗平竜也」本来の姿を垣間見ることができたらこの上なく喜ばしい。

 初戦の相手は創志学園(岡山)。大会二日目の第一試合から二人の檜舞台は幕を開ける。大阪桐蔭との対戦は準々決勝以降となった。仮に決勝で相まみえることとなれば、正にロマン。深紅の大優勝旗が歩人の手に渡った暁には、親子、母校、東北地方が背負ってきた重荷を降ろすことができるはずだ。

 

yamadennis (@yamadennis) / Twitter