ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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オトナの分別〜大野雄大が泣いた夜

●2-4DeNA(14回戦:バンテリンドーム)

 オトナとは何ぞや、について考えてみた。タバコを吸う事、 酒席のマナーを心得ている事、休日はゴルフ接待に出かける事、ジャンプではなくビッグコミックや漫画ゴラクを愛読している事、カラオケの十八番が「酒と泪と男と女」である事……etc.

 子供の頃に漠然と思い描いていた “オトナ像” に、いざ自分が大人になって近づけているかと言えば、正直なところ全然だ。何なら趣味嗜好は10代の頃から大して変わっていないし、未だにジャンプは毎週欠かさず読んでいる。そりゃたまには酒を飲まきゃやってられない夜もあったりするが、だからと言ってスナックやキャバクラでチーママ相手にくだを巻くような事はない。

 オトナになったら誰しもが三船敏郎とか舘ひろしみたいな、渋くて色気のある男になれると思い込んでいたあの頃。しかし令和の世のオトナは通勤電車でも新聞ではなくスマホゲームに興じ、錠前付きのビジネス鞄ではなくリュックを背負い……。なんだか昭和時代のオトナに比べて随分子供っぽく思える。野球界を見渡しても、江夏豊や落合博満のようなオトナ……というより「ザ・おっさん」という風体の選手は絶滅危惧種だ。

 いわゆる記号的なオトナ像は確かに消滅しつつある。ただ、内面的な “オトナ” に関しては、また話は別である。いくらオトナを装おうとも、癇癪持ちだったり、横柄な態度を取ったり、すぐ不貞腐れるような奴は本質的には子供、いや “お子様” なのだ。

あの涙を見てしまうと、いつかパンクするのではと心配になってくる

 その点、大野雄大は立派な大人だと思う。何故かって、まず人のせいにしない。今夜でいえば、レビーラが守備で足を引っ張ったことは明白であり、「グラブに触れていない」というだけでエラーも付かず、大野に自責点が付いてしまうのは明らかに理不尽である。この試合はあれで負けたようなものだから、大野が感情を爆発させても誰も文句は言わないだろう。

 しかし大野は我慢した。打ち取ったフライが地面に落ちた瞬間はさすがに顔をしかめていたが、降板後のコメントでは恨み言は一切なし。ただ、6回表にダメ押しとなる4点目を喫した際、大野の頬を涙が伝っているように見えたのは気のせいだろうか。誰よりも優勝へ懸ける想いが強い男である。悔しさ、不甲斐なさ……、凡人には想像も及ばないほどの感情が鬱積していることだろう。

 涙を流す大野に対してチームメイトが声をかけに行かなかったのも残念だった。孤独に耐え、味方に足を引っ張られ、それでも大崩れしなかったのはさすがの一言。でも今日くらいは我慢せず、大人の分別なんかかなぐり捨てて、グラブを叩きつけるくらいの荒ぶりを見せても許されたと思う。あの涙を見てしまうと、いつかパンクするのではと心配になってくる。

 決して不平不満を表には出さない。そんな優しさの裏側に、どれだけのストレスを抱え込んでいるのだろうか。グラウンドでは大人でも、せめて今夜は大好きなお酒を飲みつぶれて眠るまで飲んで、思う存分愚痴をこぼせばいい。今夜の負けは、大野のせいなんかじゃない。

木俣はようやっとる (@kimata23) / Twitter