ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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足りないのは技術か、執念か〜岡林勇希の失敗

●7-9東京ヤクルト(15回戦:明治神宮野球場)

 まるで記録のバーゲンセールだ。村上宗隆の5打席連発に続き、今夜は大島洋平が6打数6安打の球団新記録を打ち立てた。NPB全体で見ても1試合6安打以上は史上8人目という、歴史的な固め打ちである。こんな夜は勝って大島の打棒を称賛したかったが、なかなか現実はうまくいかないものだ。

 しかも6安打以上の過去7例は、いずれも打った選手の所属するチームが二桁得点を挙げて大勝を飾っている。一桁点数も初なら、負けるのも初。ある意味で「屈辱的な敗北」と言ってもよかろう。

 打ちも打ったり16安打。それでも押し切られたのは、ひとえに拙守が響いたからに他ならない。1点ビハインドの3回裏、マウンドには2回に引き続いて根尾昂が立っていた。先頭の山田哲人の打球は高々と舞い上がったポップフライ。しかしこれを大島とガルシアがお見合いをし、打球はポトリとグラウンドへ。年に何度もない珍プレーを喫してしまう。

 ミスというのは不思議と重なるものだ。無死一塁で、対するは村上宗隆。その3球目、甘く入った変化球だったが、村上の打球はセンターややショート寄りのゲッツーコースに。打球方向を振り向いた根尾が雄叫びを挙げたのは、ゲッツーを確信したからだろう。

 ところが土田龍空がここで送球ミスを犯してオールセーフとしてしまう。実質的な2者連続エラーで一、二塁。続くサンタナへの初球をライトスタンドへ運ばれ、あっという間にスコアボードに致命的な「3」が刻まれた。さらに4回裏には1死一、二塁で今度は岡林勇希が目測を誤り、外野フライが右前打に。ここから2点を失い、4回までに8失点という重いビハインドがのしかかる展開となった。

「執念が足りない」

 ……と、まぁミスを振り返るだけでも結構な文字数を消化してしまったが、これだけのミスを犯しながら2点差まで詰め寄ったことはポジティブに捉えてもいいだろう。それより、ひとつ気になるのは岡林の交代理由だ。

 試合後、立浪監督は談話の中で大島個人の「執念の足りなさ」を名指しで指摘したようだ。岡林のミスも、落下地点まで来ていた大島が捕るべきだったと。そうなると、5回の守備から交代したのには別の理由があったことになる。考え得るのは直前の打席。2死満塁という千載一遇のチャンスに、岡林はあっけなくショートフライに倒れている。ただ、残念だったのは結果よりもその内容にある。

 この日既に11安打を浴びているサイスニードは、もはや気力だけで投げているような状態で、そんな相手を打ち崩すのは天才・岡林なら造作もない事かに思われた。ところがその初球、「打ってください」とばかりの真ん中高めのストレートを、岡林は平然と見送ってしまったのだ。

 最初から振らないと決めていたのか、ヤマを張っていたのか。二度と無いようなチャンスボールを見送った時点で、勝負は決したも同然だった。立浪の言葉を借りるなら「執念が足りない」という事になる。5月初頭に京田陽太を “強制送還” した時もそうだが、立浪は気力に欠けたプレーには容赦がない。

 岡林ほどのバッティングセンスがあれば、スタミナ切れを起こしている投手の失投は捉えられるはずだし、まして見送るなど言語道断……といったところか。とは言え岡林だって漫然と打席に立っていたとは思えない。むしろ執念なら誰よりも強いタイプのはずだ。

 そもそも執念とは何ぞやという話だが、このケースにおいては配球の読みを含めて「技術」の範疇だと言える。その意味では執念と技術は同義で、初球を見送ってしまったのも岡林の経験値の浅さから来る読みの失敗=技術不足と言い換えられるだろう。

 つまり練習と実戦経験で挽回可能。なあに、心配はいらない。岡林なら明日にでもやり返してくれるはずだ。

木俣はようやっとる (@kimata23) / Twitter