ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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セオリーは破るためにある〜「カウント3-0」からのファウル

○3-0広島(16回戦:MAZDA Zoom-Zoom スタジアム 広島)

 両軍無得点で迎えた5回表。打球は静寂を切り裂くように高々と舞い上がると、そのままレフトスタンドの後方へと消えていった。打った瞬間それと分かる驚愕の弾道を放ったのは、まだ見慣れない背番号94ーーペドロ・レビーラその男である。

 挨拶がわりとしてはこれ以上なく完璧な一発。浮いたスライダーとはいえ、失投を見逃さずに打てるのは一流打者の条件だ。さらに第4打席では、喉から手が出るほど欲しかった3点目を叩き出すタイムリーを放ち、初戦にしていきなりヒーローインタビューまで経験。藁にもすがる思いで支配下登録に踏み切った首脳陣の期待に応える活躍は、「衝撃デビュー」と表現しても大袈裟にはならないだろう。

 タイムリーを打ったときのシチュエーションは、無死一塁で木下拓哉に送りバントをさせて作ったチャンスだった。チーム屈指の好打者に犠打の指示を出せるのも、後ろにレビーラが控えるからこそ。打線にスラッガーが一人加わっただけで、戦術は無数に広がるのだ。

 トレードマークはケツのデカさと丸太のような上腕二頭筋……。ビシエドを小型化したようにも見えるが、身長からいえば山川穂高の方が近そうだ。久々に現れた本格的スラッガーは、果たしてドラゴンズを貧打から救うことができるのか? 

「カウント3-0」セオリー破りのファウル

 レビーラもいいが、今夜もう一つ「おっ」と唸らされた場面があった。7回表、2死一、三塁での岡林勇希の打席である。大島洋平のタイムリーで貴重な2点目を奪い、なおも追加点のチャンスという場面。

 結果的に岡林は四球を選んで満塁となるのだが、注目したいのがこの打席の4球目を打ったファウルだ。この時のカウントは3-0。制球に苦しむ中崎翔太に対して黙っていても四球が取れそうな状況ではあったが、岡林はど真ん中に来たカウント球を迷いなく打ちに行ったのだ。

 野球には3-0からの4球目は見送るというセオリーがあるが、時々こうしてスイングする事により、投手はカウント球を投げ辛くなるし、得点圏であれば一層のプレッシャーを与えることができるかも知れない。

 打つ、投げるだけではなく、いかに相手が嫌がることをやれるかという細かい心理戦こそが勝負の肝だとすれば、岡林の「3-0からのスイング」は間違いなく相手にとって気持ち悪さを感じさせただろうし、今後の配球にも影響を及ぼすものであろう。

 実は岡林がカウント3-0から打ちに行くのはこれが初めてではない。7月15日の阪神戦でも青柳晃洋を相手に仕掛け、この時はみごとにタイムリーとなっている。好投手は失投が少なく、打ち崩すのは難しい。ならば確実に甘い球が来るチャンスを逃す手はない……という意図があったかどうかは分からないが、少なくとも岡林は「なんとなしに打席に立っている」わけではないのは間違いなさそうだ。

 ちなみに今季、岡林がカウント3-0になったのは今日を含めて12回。そのうち6回が今月に集中している。考え得る要因としては、以前ほど早打ちをしなくなり、ボールを見極められるようになった事。そして打率の向上と共に投手が安易にストライクを取りに来なくなった事が挙げられる。

 遂に打率十傑にランクインし、今後ますます投手は「対岡林」に神経を使うことになるだろう。そうなるとボール先行になりやすく、自ずとカウント3-0になる機会も増える……その時、岡林はバットを振るのか否か。注視していきたいポイントだ。

木俣はようやっとる (@kimata23) / Twitter