ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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SEASONS〜若手と4番の活躍で全てが噛み合った!

 サブスクで懐メロ漁りをしていた折、なんとなしに浜崎あゆみの「SEASONS」を聴いたのだが、ビックリするほどドラゴンズの境遇を歌っていて泣けてきた。ほとんどの人が頭ん中「??」だと思うので、解説しよう。まず最初のサビ。

 

今日がとても楽しいと 明日もきっと楽しくて
そんな日々が続いてく そう思っていたあの頃

 

 常勝軍団だった、かつてのドラゴンズ。毎年のように優勝争いを繰り広げるなど、体感的にはほぼ毎日勝っているも同然。このままいつまでも強い時代が続くのだろうと思っていたし、疑いもしていなかった。

 いつか落合監督がいなくなっても、きっとのらりくらりとセ・リーグの上位には居続けるのだろうと。まさしく、「そう思っていたあの頃」である。

 

 ところが楽しい日々はやがて終わってしまうものだ。そう、恋も野球も……。現に2010年頃からはファンが「勝ち慣れ」という状態になりつつあり、観客動員数も日本一翌年の2008年をピークに急激に落ち込んでいくのであった。

 この状態を、あゆはこう表現している。

 

繰り返してく毎日に少し 物足りなさを感じながら

 

 人間とは贅沢な生き物だ。幸せや楽しさも、毎日続けば物足りなくなってしまうのだから。そうして楽しい日々は終焉を迎えると、今度は「悲しい日々」が訪れるのだ。

 

今日がとても悲しくて 明日もしも泣いていても
そんな日々もあったねと 笑える日が来るだろう

 

 これは2013年以降のドラゴンズだ。楽しかったあの頃は既に過去となり、ほぼ毎日負け続ける暗黒時代が到来してしまう……。それでもファンは「そんな日々もあったね」と、笑える日がいつか来るはずだと信じ、健気に応援し続けてきた。

 しかし、そんな日々も10年続いてしまうと、さすがに嫌気が刺してくるものだ。少しずつでも改善の兆しがあればまだ良いのだが、残念ながらドラゴンズ……というより中日球団を取り巻く財政状況は悪化の一途を辿っているように思える。

 2017年頃までは億単位の資金で外国人を連れてくることもできたが、近年はキューバの有望株を中長期的な視野で育成する路線にシフト。先細りの未来しか見えない状況を悲観し、一昔前を懐かしんでは涙ぐむ有り様は、まさしく「今年もひとつ季節が巡って 思い出はまた遠くなった」である。

 そう、毎日が楽しかった黄金時代なんて、もはや遠い日の花火のような思い出に過ぎないのだ。

4番が打てば、全てが噛み合い、勝てる

○9-0広島(15回戦:MAZDA Zoom-Zoom スタジアム 広島)

 待望の立浪監督率いる2022年シーズンも、前半戦を終えて借金12の最下位と厳しい戦いを余儀なくされており、さすがの宇一郎総帥も「苦しんどるね」と眉をひそめるしかない状況となっている。

 相次ぐ怪我人、洒落にならない貧打は立浪としても誤算だったに違いない。それでもダラダラと残り試合を消化するのではなく、何か一つ、いや二つ三つと光明を見出していかなければ、色んな意味でドラゴンズは死んでしまうことになる。

 そこでまず立浪が決断したのが、レビーラガルシアの両キューバ勢の支配下登録だった。おそらく当初の想定では今季はファームで鍛え、戦力としての計算は来季以降を見据えていたはずだ。

 何しろ守備に関しては未知数で、バッティングだって「パワーがあるらしい」程度の情報しかない。それでも貧打解消の助けになるなら……という魂胆が痛いほど伝わってくる、背に腹は代えられない的な決断だ。

 さらに立浪は若手選手の積極起用を明言。これは石川昂弥や鵜飼航丞を使っていた開幕時から一貫した方針でもあるが、ショートを京田陽太から土田龍空に切り替えたのはさすがに驚いた。もちろん今日、後半開幕戦のショートを守ったのも当然のように土田だった。

 そして先発マウンドに立ったのは、なんと柳裕也でも大野雄大でもなく高橋宏斗。この試合どうこうを超越し、今後数年間を見据えてドラゴンズ先発陣の軸は高橋でいくのだという、強烈なメッセージ性を感じる大抜擢だ。

 ややもすれば批判も起こりそうな極端な若返り策だが、若さはうまくハマれば凄まじいまでの反発力と加速を生み出すものだ。今夜はまさにそんなゲームになった。

 大役を担った高橋が8回途中までノーヒットの快投を披露すれば、岡林勇希が猛打賞、土田もタイムリーを含む2安打、そして試合を締めたのが24歳の藤嶋健人、22歳の根尾昂の地元密着リレーという。文句のつけようもない若手大活躍に、夢心地を感じたファンも多いことだろう。

 ただ、忘れてはいけないのは……いや忘れるはずもないのだが、やはり試合の流れを作ったのは4番・ビシエドの3ホーマー炸裂である。いつも窮屈な投球を強いられる高橋にとって、初回の複数得点、中押し、ダメ押しの理想的な援護点が大胆さを生み、あわや大記録の好投につながったのは間違いない。

 4番が打てば、全てが噛み合い、勝てる。そういう風に野球はできているのだ。苦しい事の方が多くても、巡るシーズンの中でいつか「笑える日が来るだろう」と、少し前向きになれた快勝だった。今日がとても楽しいと、明日もきっと楽しいはず。明日も頼むぜ、エルタンケ! ララーイ。

木俣はようやっとる (@kimata23) / Twitter