ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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永遠の野球少年〜平田良介カムバック

○3-1阪神(16回戦:阪神甲子園球場)

 何事もせっかちは良くないと反省している。実は9回裏、ライデルが出てきた時点で勝利を確信し、早々とブログを書き始めていたのだ。主題は清水達也で、8回裏の攻防について書くつもりだった。ところが1死三塁となって、ボテボテの打球は前進守備を敷いていたショート・土田龍空のグラブに。アウトだ! と叫んだのも束の間、身をよじりながらタッチをかいくぐった走者の方がわずかに早く、土壇場でまさかの同点に追いつかれてしまった。

 リプレイで確認すると、土田がほんの一瞬握り直した分、送球が遅れていたことが分かる。とはいえ捕球までは完璧だし、ミスと言うほどのプレーでもない。それ以上に近本光司のスタートの速さ、そしてスライディングの正確さが上回ったという事だろう。

 いやはやコンマ1秒の “無駄” が戦況を左右するのだからプロ野球は凄まじい。待望の甲子園初勝利かと思われた試合は延長に突入し、清水の話はボツに。「勝負は下駄を履くまでわからない」という古の教えを痛感した次第である。

永遠の野球少年、617日ぶりアーチ

 崖っぷちから蘇生し、サヨナラを信じてボルテージが上がっている阪神に対して、ライデルで追いつかれたドラゴンズはあきらかに劣勢に立たされていた。良くて引き分け、まあ多分サヨナラだろうな……というネガティブな考えに支配されてしまうのは、10年にも及ぶ “負け体質” のなせる技であろう。

 無理もない。この日も無死一、二塁で無得点に終わるなど貧打は相変わらずで、とてもじゃないが阪神のリリーフ陣から得点できるとは思えなかったのだ。

 ところが先にビッグチャンスを得たのはドラゴンズだった。11回表、先頭のビシエドにツーベースが飛び出して無死二塁。昨日あれこれ書いたビシエドがマルチ安打。おみそれしました。けれども、まだまだこんなもんじゃ手のひらを返すわけにはいかない。何しろ4番なのだから、もっともっと打ってもらわないと。

 続く石垣雅海がきっちりと犠打を決め、打席には三ツ俣大樹。バッテリーはスクイズも警戒していたようだが、このバッターは小細工よりも思いっきり振らせた方がいい結果が出る。その読みどおりフェンス際までフライを上げ、貴重な犠飛による1点がスコアボードに刻まれたのだった。

 ただし、油断は禁物だ。11回裏は近本、佐藤輝明との対戦が待っており、たった1点ではどう考えても心許ない。本音としてはもう1点欲しいが、2死ランナー無しからではどうにもならんかーーと思った矢先の平田良介の一発。解説・俊介氏の「あ〜」とうなだれた声が心地いい。レフトスタンドに飛び込む今季1号は、平田にとって実に617日ぶりのアーチ。思い出の甲子園で、大きな仕事をやってのけた。

 久々の本塁打がよほど嬉しかったのだろう。まるで新人のプロ初本塁打のように白い歯をこぼしながらダイヤモンドを一周し、ベンチに戻ってきても満面の笑みを絶やさない表情には「永遠の野球少年」というフレーズがぴったりだ。あんなに嬉しそうに野球をやるプロ17年目もめずらしい。色々苦しいこともあったが、ようやく平田がカムバックした感じがして、見ているこちらまで幸せな気分になった。

 1点は取れても「もう1点」が取れずにやり返される事が多いドラゴンズにとって、この一発が持つ意味は大きかった。阪神の戦意を低下させ、祖父江大輔を幾分か楽にさせたであろう本塁打。おみごとの一言である。

木俣はようやっとる (@kimata23) / Twitter