ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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1,082日間の成長〜今夜はバッテリーの勝利だ!

○4-1東京ヤクルト(13回戦:バンテリンドーム)

 投手は繊細な生き物だと言われる。どんなに調子が良くても、些細な事をきっかけに突如として崩れる投手の姿をこれまで幾度となく見てきた。この日マウンドに立った笠原祥太郎にも、初回からその気配が漂っていた。

 先頭の並木秀尊を3球でピッチャーゴロに仕留めたのは良かったが、続く山崎晃大朗が粘りに粘り、11球の攻防の末に四球を与えてしまう。ストライク先行だっただけに、テンポよくアウトを取りたかったところで出塁を許し、明らかに笠原のリズムが崩れた。しかも迎えるはクリーンアップ。当然、4番に座る村上宗隆の存在を意識せざるを得ず、並木と山崎に対する投球とは一変してボール先行の弱気な投球が顔を見せ始めていた。

 ここから1死満塁としてオスナにタイムリーを打たれ、なおも大ピンチ継続。お立ち台で笠原本人が「どうなる事かと思った」と振り返ったのは偽らざる本音だろう。

 したたる汗。肩で息をする笠原に対して、一貫して内角を要求する強気なリードをみせたのがマスクを被る木下拓哉である。制球に難のある笠原には遊び球を挟むよりも、早いうちに勝負させた方が得策だという読みがあったのかどうか。だとすれば、その選択は見事に的中した事になる。

 おあつらえ向きの6-4-3の併殺網にかけ、立ち上がりのピンチを最少失点で乗り切った時点で、試合の流れはドラゴンズが掴んだと言っても良かった。チームも3回に逆転に成功し、青息吐息だった笠原も2回以降は立ち直ったが、5回に再び満塁のピンチを背負うと、打席には第1打席でタイムリーを喫したオスナ。

 その2球目、チェンジアップが高めに浮いた瞬間に思わず目を背けそうになったが、これをオスナの打ち損じでショートフライに打ち取り、薄氷を踏む思いながら何とか切り抜けたのだった。

 かつての笠原といえばストレート系とチェンジアップの2球種を軸に、時々カーブを交える程度の投球幅だったが、この日は120キロ台のスクリューを多投しており、オスナの第1打席でも打たれたのはこのスクリューだった。おそらく100キロ台のチェンジアップはオスナの想定に無かったのではないだろうか。

 新たな武器をモノにした笠原、そして笠原の能力を最大限に引き出した木下。今夜はバッテリーの勝利である。

1,082日前も、マスクを被ったのは木下だった

 木下はリードだけではなく、打撃の冴えもすごかった。何しろ全打点を叩き出す大活躍。派手なのは7回のダメ押し2ランだが、試合展開の中で大きかったのが初回の同点犠飛だ。

 先頭・大島洋平のヒットと盗塁、岡林勇希の犠打でいきなり1死三塁のチャンスを作り、何としても追いつきたいという場面でわずか1球で犠飛を決めたのは、ベンチに大いに勇気を与える一打となった。相手投手は今季好調の小川泰弘なだけに、立ち上がりを攻めておかなければあれよあれよと抑え込まれる危険性もあっただろう。

 このあたりの確実性は、さすがは球団史上初の生え抜き球宴ファン投票出場捕手といったところか。笠原が前回勝利した1,082日前も、マスクを被ったのは木下だった。しかしあの頃の木下と今の木下とでは、成績も立場もまるで別人だ。当時は加藤匠馬の影に隠れて2番手、3番手捕手を任されていたが、今や押しも押されもせぬ竜の正捕手である。

 ヒーローインタビューでも久々のお立ち台となった笠原をうまくリードして笑いを取るなど、頼もしい女房役もすっかり板についたものだ。

木俣はようやっとる (@kimata23) / Twitter