ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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脱「アットホームな職場です」〜加藤翔平ここにあり

 そういえば先の電撃トレードについて触れていなかったので、今日はまずそちらの話題から。

 30歳の石岡諒太と29歳の後藤駿太。ただでさえ人材過多の外野手を獲得したことから、トレード自体の意義に引っかかりを感じたのは私だけではないだろう。選手に罪はないが、編成的な合理性は薄いと言わざるを得ない今回のトレード。その意図を推察するなら、やはり「刺激策」という言葉がしっくり来る。

 ぬるま湯体質になりがちな組織の共通点として、人員の流動性の乏しさが挙げられる。異動や入れ替えの少ない労働現場では緊張感が生まれにくく、その代わりに馴れ合いが蔓延する。水は絶えず流れるから不純物が循環し、それによって雑菌の繁殖が抑えられるのだ。いわんや人材をや、である。

 外国人やFA選手の獲得が少なく、育成契約選手の指名にも消極的なドラゴンズは競争が起こりにくく、ある意味で選手からすれば “安心して働ける環境” と言えるのかもしれない。長いこと一軍出場がなくても、何年も在籍し続けられるのはドラゴンズくらいのものだろう(広島・白濱裕太のような例外はあるにせよ)。いわゆる「アットホームな職場」ではあるのかも知れないが、熾烈なペナントレースを制するにはそれではちょっと物足りない。

 だからこそトレードは「次は俺かもしれない」という危機感をいやが上にも植え付けるだろうし、向上心の強い選手にとっては「頑張れば環境を変えられる」というモチベーションにもなるかも知れない。いずれにせよ、同じメンバーで同じような毎日を繰り返していても、そこに成長や進歩は生まれにくいものだ。石岡の放出と駿太の獲得が、既存選手への刺激になるなら、今回のトレードはそれだけでも意味があったと言えるのではないか。

 もちろん新加入の駿太には即戦力としての活躍を期待している。藁にもすがる思いで低迷脱出を図りたい現状、立浪監督だってかつてのドライチをカンフル剤としてのみ獲得したわけではないだろう。

 てっきりすぐに一軍で使うかと思ったのだが、この日までに昇格はなし。逆に実績の乏しい石岡の方が先に新天地デビューを飾ったのは少々意外であった。もっとも一軍練習には参加しているようなので、週明けには登録されると見られる。

 まだ老け込む年ではなく、ポテンシャルの高さは折り紙付き。広いバンテリンドームなら強肩堅守を大いに生かせるはずだ。

無死満塁を救った「加藤翔平ここにあり」

○2-1広島(14回戦:バンテリンドーム)

 初回先頭にヒットを許して以降、完璧な投球をしていた柳裕也がピンチを迎えたのは7回表のことだった。しかも無死満塁。一打同点、逆転まであり得る大ピンチである。打席には堂林翔太。このカード今季二度にわたって決勝弾を許している難敵だ。その2球目、チェンジアップが高めに浮き、「来た!」とばかりに強振する堂林。高々と舞い上がった打球はフェンス際で失速したが、犠飛には十分な飛距離である。

 捕球したのはこのイニングからレフトに入っていた加藤翔平。ここでの判断が的確だった。加藤は無理してホームを狙うような事はせず、冷静に三塁に送球。二塁走者の坂倉将吾の三進を阻止したこのプレーが柳の窮地を救う形となった。

 1死一、三塁と一、二塁とでは大違いだ。こうなれば柳は目の前の打者に集中できるし、カープとしては戦術の選択肢が大幅に狭まる。さらに加藤は2死から松山竜平の大飛球を好捕し、決して多くはない出場機会でしっかりと「加藤ここにあり」をアピールしたのだった。

 スーパーサブの役割を掴みつつある加藤だが、同じタイプの駿太の加入により必ずしも安泰とは言えない状況にある。そんな中での躍動は、首脳陣の目にも留まったに違いない。

 一方で寂しかったのが渡辺勝の打席だ。追加点を狙った2死三塁で代打に起用されるも、ノー感じの空振り三振。駿太の昇格を前にして、同じポジションを競う加藤と渡辺とで明暗が分かれた格好だ。

 だが、これでいい。チームが逞しくなるのに必要なのは、競争、競争、競争である。

木俣はようやっとる (@kimata23) / Twitter