ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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生気を失くしたエース〜遊ぶ余白を与えられなかった貧打の罪

●0-7広島(13回戦:バンテリンドーム)

 張り詰めた糸が緩んだのは6回表のことだった。それまで好投していた大野雄大が突如として崩れたのだ。マクブルームの3ランに続き、小園海斗にも2ランを浴びて5失点。同じ140キロ台のボールでも、気持ちがこもっているかどうかでこうも結果が変わるものなのか。

 マクブルームに打たれた瞬間、打球方向を振り返ろうともしなかった大野の気持ちは完全に “切れて” いるように見えた。シビアな見方をすればエースとしてあるまじき態度という事になる。しかしながらこうも思う。大野にも同情できる面は多分にある、と。

 相手先発の森下暢仁はどう見ても本調子ではなく、事実2回から4回まで3イニング連続で得点圏のランナーを許し、球数もかさんでいた。だが、そんな森下をもさえ攻略できないのが泣く子も黙る貧竜打線である。塁上を賑わせながら「あと一本」が出ないのはお家芸の域と言ってもいい。スタンドに充満する溜息とフラストレーション。そんな中で大野は味方の反撃を待ちながら、黙々と左腕を振り続けた。

 だが追加点を取られてはいけないというプレッシャーは、どうしたって投球を窮屈にしてしまうものだ。1死一、三塁から仮に1点失ってもまだ2点差。普通ならまだまだ逆転可能な範疇だが、このチームにそれは通用しない。1点を取るのにも窮するドラゴンズ打線にとって次の2点目は致命傷にもなりかねず、ましてや3点目、4点目が入った時にはその時点で実質的なゲームセットである。

 マクブルームへの初球。白球が高々と舞い上がった刹那「マジか」とは思ったが、「まさか」とは思わなかった。ホームランと凡打の差は紙一重とはよく言ったものだ。犠飛も許されないという状況で、 “遊ぶ余白” が無い以上は攻めるコースも限られ、ひとつ間違えればこのような結果になるのは詮方ない。散々チャンスを潰し、大野に遊ぶ余白を与える事ができなかった打線を、私は恨む。もちろん大野自身が叩いた犠打併殺は反省すべきだが……。

 続く坂倉将吾が味方のエラーで出塁し、打席には小園海斗を迎える。しかし、生気を失くした大野にはもうキレのあるボールを投げる余力は残ってはいなかった。

ドラゴンズ復調の鍵は “サタデー大野” にあり

 先週の登板回避により大野雄大の登板がカード頭から2戦目に移動する形となった。金曜は必然的にエース対決が組まれる事が多く、今季の大野は菅野智之や青柳晃洋といった難敵との投げ合いで相当消耗していたのも確かだ。

 カード頭を大野で取って弾みをつけるーーという意図は分かるが、味方の援護が望めない以上、好投の大野を見殺しにするケースが増えるし、果たしてチームにとっても大野にとっても “金曜登板” は良い判断だと言えるのか、疑う余地はあった。

 この日投げ合った森下はエース級だが、おそらく今後は格下との対戦も増えるだろう。常に1点を争う僅差の試合でばかり投げ、体力的にも精神的にも疲弊し切っていたであろう大野が少しでもラクな気持ちになれるのであれば、ローテずらしはメリットの方が大きいと考えられる。

 借金13と再び今季最多に膨らんだ現状、立浪ドラゴンズに求められるのはコツコツと巻き返していくことしかない。たちこめる暗雲を取り払うには結局のところ大野に白星が付き、勝ち頭としてチームを牽引してもらうのが早道であろう。そう、2020年のように。

 ドラゴンズ復調の鍵は “サタデー大野” にあり。 今日は残念だったが、試み自体は間違っていないと信じたい。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter