●5-x6阪神(11回戦:阪神甲子園球場)
三ツ俣大樹のサヨナラ打という最高の形で始まった一週間は、5連敗という最悪な形で幕を閉じた。まるで天国から地獄へと突き落とされたような気分だ。
しかし “まさか” とは言えない面もある。離脱中のビシエドに続いてこの日は木下拓哉が腰痛で欠場。代役の石橋康太は咄嗟の判断力や守備面において不安が拭えず、11回裏には痛恨の悪送球でサヨナラの局面を演出してしまった。なまじ接戦になっただけに、最後の最後で正捕手不在が響いた形である。
溝脇隼人や石岡諒太の起用など、なんとか流れを変えようという試行錯誤は伝わってくる。だが4番と正捕手が抜けてしまってはいかに打線を組み替えようとも効果は限定的。相手からすれば「誰やねん」という選手をあれこれ並べ替えているだけで、威圧感やイヤらしさは皆無であろう。
阪神も開幕後しばらくは今のドラゴンズに負けず劣らずのドン底を味わったが、近本光司、佐藤輝明、大山悠輔という強力な “核” がいたからこそ踏みとどまり、6月以降はV字回復を見せている。一方でドラゴンズは次々と主力級が抜け、打線を組むのにも四苦八苦。この状況では借金11という惨状も “必然” と言わざるを得ない。単純に、戦力が足りていないのだから。
目指すべきは本当に “ピストル打線” でいいのか?
この3連戦は驚異的なまでのチャンスでの弱さも目立った。初戦は11安打4得点、2戦目は9安打無得点。3戦目が15安打5得点。打ったヒットの数に対してどう考えても得点が少なすぎる。
今日でいえば5回表、相手のエラーで作った1死満塁のチャンスから犠飛で1点しか取れなかった場面があるが、相手からすれば1点失ったショックよりも「満塁を1点で凌いだ」という感覚の方が強いはずだ。
理想論でいえば、もし満塁弾でも打っていれば相手を意気消沈させることができるわけで、“ここぞ” で打てない勝負弱さに加えて “トドメ” を刺せない押しの弱さも長年の課題となっている。
セ・リーグでは村上宗隆が圧倒的な破壊力で巨人を粉砕し、パ・リーグでは山川穂高が通算200号本塁打を史上最速ペースで記録した。「ホームランしか狙ってない」と豪語する山川はもちろん、二人とも「チャンスでなんとか1点」なんてせこい考えは頭の片隅にも無いのだろう。必死で1点を取ったかと思うと簡単に3,4点を失うドラゴンズが必要としているのは、こうした思考のスラッガーなのではないか。
だがチーム方針としては本拠地の広さを生かすため、「単打と走塁に主眼を置いた若手育成プログラム」を組んでいるのだと。週刊誌の報道を信じるならば、そういう事らしい。これが本当ならショッキングな話である。つまりドラゴンズはテラス設置や強竜打線復活には関心がなく、1963年近鉄ばりのピストル打線形成を目指しているわけだ。
ピストル打線の名称は、中距離打者が多く本塁打に期待できない分、単打や二塁打を重ねての得点が多かったことから、破壊力抜群の「ミサイル打線」(大毎)や「水爆打線」(松竹)との対比で名付けられたという。
とはいえ本塁打こそ少ないもののチーム打率、二塁打数共にリーグトップクラスを誇り、貧打だったかと言えば決してそうではなかったのが実情だ。中距離打者すら数えるほどしかいない今のドラゴンズの戦力でこれを目指しても、空回りするのは目に見えている。
試合後、立浪監督はチーム随一のパワーを秘める鵜飼航丞の二軍行きを表明した。今の状態なら無理もない。昨日の試合、バットを短く持ち、当てに行くようなスイングでセカンドゴロを打つのを見た時は悲しくてやりきれなかった。
伸び伸びと、「ホームランしか狙ってない」と言えるような環境で育てていたら、今ごろ本数ももっと増えていたのだろうか? もし村上や山川がドラゴンズに入団したら、果たしてここまでの大選手になっていたのだろうか?
……ダメだ、負けが続くと思考もネガティブになりがちだ。こんな夜は「10.10」の動画でも見て気を休めるとしよう。借金11ーーもはや現実逃避するしかないところまで来てしまった。
木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter
【参考資料】
西武・山川「ホームランしか狙ってない」 日曜日は11試合で8本目“サンデー山川”とネットで話題― スポニチ Sponichi Annex 野球