●0-10阪神(10回戦:阪神甲子園球場)
記録的な猛暑に見舞われた日本列島。しかし茹で上がるような熱気とは真逆のお寒い内容に終始してしまったのが我らがドラゴンズである。
思い出すのも億劫な一戦をわざわざ振り返り、反省点を語るような無粋なマネをするつもりはない。福谷浩司が炎上し、根尾昂も打たれ、打線はいつも通り打てなかった。それだけの事だ。取り立てて「あのプレーが……」「あれが惜しかった……」なんて指摘するまでも無かろう。
日に日に荒んでいくのはファンのメンタルだけではない。立浪監督は試合後「ご覧の通り、チャンスになったら打てないから、何ともならないですね」と、全イニングで出塁を記録しながら零封負けを喫した打線に対して突き放すように言い放った。「打線はなんとかします」と宣言して迎えた就任初年度。相次ぐ主力の離脱という不運に見舞われたとはいえ、想像を絶する貧打に現状では打つ手なしと言ったところか。
この日は初回から3回までいずれも得点圏のチャンスを作りながら後が続かず、特に3回の無死二、三塁をあっさりと逸した時点で早くも諦めムードが漂ってしまった。3番・レフトでスタメン出場し、二塁打を含むマルチ安打を記録した郡司裕也も7回の1死一、二塁では5-4-3のダブルプレー。
たとえ焼石に水であっても、ここで猛打賞となるタイムリーでも打ってくれれば「大敗の中で光った郡司の奮闘」という一点でポジれたのだが、まったくもって何から何までうまくいかないものである。
私はただ球場に行って、立浪監督に野次を飛ばしたいのである
「0-10」のスコアは直近4カードで3度目らしい。それだけ頻繁に先発投手が炎上し、打線が沈黙している証拠でもある。かといって起爆剤になるような選手も見当たらず、わずかな糸口すら見出せないまま大敗を繰り返している。
こんな時、ファンは一体何をモチベーションにして応援を続ければいいのだろうか。昔なら球場へ足を運び、ベンチに向かって野次を飛ばすようなことも許されたのだろう。しかし令和の世でそれをやってしまえば、たちまち隠し撮り動画がSNSで拡散され、一夜にしてちょっとした有名人になってしまう恐れがある。
元々は球場に野次は付きもので、ウィットに富んだ野次は20世紀のプロ野球を彩る一種の華でもあった。もちろん万人を魅了するバラや向日葵ではなく、球場の片隅に咲く雑草のような存在ではあるが。
「珍プレー好プレー」の名場面に、スタンドからの野次に応戦する一塁手・駒田徳広のネタがある。あれだって今なら色々な意味で炎上案件かも知れない。おそらく野次を飛ばしていた男性は、はっきり顔が映る形でTwitterかTikTokで断罪される事だろう。
とにかく他人の言動にイライラしていないと生きていけない現代人の病理……なんて世相を語るつもりはなく、私はただ球場に行って、立浪監督に野次を飛ばしたいのである。もちろん口汚い罵りや悪意に満ちた皮肉ではなく、激励を込めた喝を、だ。
でも上の理由に加えて、スタンドでの大声がまだ解禁されていないのだからどうにもならない。こんな時、星野監督が存命なら鬼の形相で叱ったのだろうか。
「オラァ、和義ぃ! 何ちんたらやっとんじゃあ! 気合い入れて行かんかい!」
世界中のどんな野次よりも効きそうな星野監督の一撃。つくづく早すぎた他界が残念でならない。
木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter
【参考資料】
中日 直近4カードで3度目の屈辱「0―10」 立浪監督「何ともならない」― スポニチ Sponichi Annex 野球