ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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反則レベルのクリーンアップ〜求められるのは確固たる3,4番育成だ

●0-10東京ヤクルト(11回戦:バンテリンドーム)

 電光石火の一撃だった。プレイボールからわずか5分後、岡野祐一郎は死を悟った小動物のような生気のない表情でマウンドに立ちすくんでいた。無死満塁で、打席には村上宗隆。先発投手は1試合につき3度の山場が来ると言われるが、今夜はこの場面を抑えるか否かが試合結果に直結するであろう事は、誰の目にもあきらかだった。

 先に追い込んだのは岡野だった。フォークとストレートだけでカウント2-2とし、フィニッシュに選んだのはストレート。しかしこの1球が高めに抜けると、岡野にはバットを構える最強打者の威圧感を前にして、神頼みのようにフォークを投じるほか成す術は残されていなかった。

 岡野の指先から放たれた渾身の一球はいとも簡単に跳ね返され、中日ファンの悲鳴と共にライトスタンド最前列へと吸い込まれていった。やや泳がされながらも掬い上げるようにしてスタンドへと運ぶ22歳の技術は、もはや “規格外” などという凡庸な褒め言葉では足りない領域まで達しているかのようだ。

 アウトカウント1つさえ取れぬまま、スコアボードに刻まれた「4」の数字。今のドラゴンズ打線の出力を考えれば、あまりにも残酷で、限りなく重いビハインドである。

 前回対戦では同じヤクルト相手に5回無安打無失点と抜群の投球をみせた岡野だったが、舞台を本拠地に移した今夜は見るも無惨な結果だけが残ってしまった。直近の二軍戦では7回1失点と好投。シーズン通算でも防御率1.86(48回1/3)と文句のつけようがない成績を収めている。

 それだけ一軍と二軍との間に絶望的なまでのレベル差があるという事か。それとも岡野自身の過剰な気負いが原因なのか。まだ3年目とはいえ、26歳でプロの門を叩いたオールドルーキーに残されたチャンスはそう多くないだろう。

 うまくいかない事だらけの毎日。せめてものストレス発散を、とテレビを付けた(あるいはアプリを開いた)ファンの感情を逆撫でするような序盤からの劣勢。原因を作った岡野はもちろんだが、最後まで見せ場らしい見せ場もなく大差を付けられての敗戦は「情けない」の一言だ。

 投手・根尾昂でポジっている場合ではない。オレたちが観たいのは、強いドラゴンズの姿なのだ。

低迷の原因は詰まるところ打線の脆弱性に行き着く

 確固たる3,4番が並ぶチームは強い。ONの例は挙げるまでもなく、その後覇権を握った赤ヘル広島には衣笠祥雄、山本浩二という強力なコンビがいた。黄金期西武でいえば秋山幸二、清原和博。中日なら福留孝介、T.ウッズはリーグ屈指の破壊力を持つ3,4番だった。近年でいえば3連覇した広島には丸佳浩、鈴木誠也が君臨し、巨人には坂本勇人、阿部慎之助がいた。それを言ったら加藤秀司、長池徳二の阪急コンビも……なんて話を始めると、キリがないのでこの辺りで止めておく。

 翻って当代最強の3,4番が山田哲人、村上宗隆である事に異論を挟む余地はなかろう。両者共に50年後もレジェンドとして語り継がれるであろう大選手。その二人が同じ打線に並んでいるのだから、ヤクルトが強いのも納得できる。はっきり言って反則レベルのクリーンアップだ。

 一方のドラゴンズはと言えば、いつまで経っても打線の苦労から抜けることができない。ようやく光が見えたかに思えた今季も、石川昂弥の離脱と中村紀洋コーチの異動があって以降、状態は下り坂を転げ落ちるように悪化の一途を辿る。

 中スポ連載『龍の背に乗って』にて、渋谷記者は事あるごとに「四球の少なさ」を指摘しておられるが、これだって要するに勝負を恐れるような打者がいない(少ない)という点に集約される話だ。

「3番・溝脇隼人」。たしかに代打でいい働きを見せているし、悪戯に咎める気はさらさら無い。ただ、歴史的な破壊力を誇る敵軍と比較してしまうと……数段見劣りしてしまうのは否めない。

 ドラゴンズ低迷の原因についてはこの10年間で散々語り尽くされてきたが、詰まるところ打線の脆弱性に行き着くのではないだろうか。ビシエド、石川を欠く中でまともな打線を組むのが厳しいのは先刻承知。今日、明日どうするの話ではなく、中長期的に見て強打者の育成は急務であり、必須だ。

 というわけでレビーラ、竜の未来は君に任せた。知らんけど。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter