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いざ、真夏の東京ドームへ。~社会人1年目の武田健吾が挑む檜舞台~

 喜ばしい知らせが飛び込んできた。昨年までドラゴンズに在籍した武田健吾が、ENEOSの補強選手として都市対抗野球に出場することになったのだ。都市対抗野球は、「大人の甲子園」と称されるアマチュア球界の最高峰。この男が真夏のビッグトーナメントに挑むことを想像できた方は、果たしていただろうか。

補強選手への道のり

 2021年、武田は控え外野手として年間通じて一軍帯同を続けた。しかし事態は急変する。ナイターに出場した翌日、球団から来季の戦力構想から漏れたことが伝えられたのだ。現役続行を希望し、トライアウトを受験。今シーズンからは、真っ先にオファーを受けた社会人野球の三菱重工Eastに戦いの場を移した。

 NPBの舞台ではないものの、三菱重工Eastは社会人野球の強豪。しかも名門のENEOSや東芝と同地区にあたる。出場機会を確保できれば、プロと遜色ない選手生活を送ることができると感じたものだ。

 最初の公式戦となった四国大会では、いきなり首位打者賞を獲得。幸先の良いスタートを切り、主力として臨んだ都市対抗野球西関東予選代表決定リーグ戦。結果は東芝とENEOSの前に2連敗を喫しての予選敗退。1年目にして味わう社会人野球の厳しさ。本戦に出場できるかどうかで、野球部の価値が決まるとだけに、敗戦の責任を感じていたことだろう。

 しかしながら、所属チームでの出場は逃したものの、東京ドームへの道は残されていた。「補強選手」という形で大舞台へのチャンスが転がり込んできたのだ。

 補強選手とは、同地区の予選敗退したチームの選手を大会期間中にレンタルできる都市対抗野球独自の制度。この仕組みによって、本大会では大幅にチームが強化され、活躍如何では大会の流れを左右することも珍しくない。

 一方で、チーム編成のバランスが崩れることもあるため、首脳陣は細心の注意を払っている。それだけに、補強選手に選ばれることは同地区の他チームから高く評価された証。社会人野球の選手にとっては最上の名誉といってもよい。

活躍の場はあるのか!?

 ドラゴンズ時代は「守備の人」として出場機会を得ていた武田。しかし補強先では、貴重な右打者として重宝されることも予想される。山﨑錬、小豆澤誠、度会隆輝らENEOSの主軸打者は軒並み左打ち。

 代表決定リーグ戦ではスタメンに左打ちが7名という極端なメンバー構成だった。昨年の都市対抗本戦でも、右打ちの強打者2名を補強選手に加え、1番と4番に起用している。

 所属先で1番や3番を打つ武田が加わることによって、打線に厚みが出ることは間違いない。代表決定リーグ戦ではENEOS相手に本塁打も放ち、一発長打を秘めた選手になっている。起用法如何では、レフトの瀧澤虎太朗やライトの度会を指名打者に回すことも可能になるかもしれない。

 トーナメントを勝ち抜くうえで、戦い方の引き出しが多いに越したことはない。大会期間中における選手の好不調、対戦相手との兼ね合いによってベストな布陣は異なってくる。例え大会期間中でもチーム状況は絶えず変化するのだ。元プロの助っ人に求められるのは、「痒い所に手が届くピース」になること。9年間のプロ生活で培った力を発揮するには絶好の機会といってよい。

 今大会の初戦で対戦するのは西濃運輸。サイド気味の角度から150キロ近いストレートを投げる船迫大雅の先発が予想される。歴代最多12度目の優勝を目指すENEOSにとっていきなりの難敵だが、武田が大仕事をしてくれるのではないかと期待してしまう。

 必要とされる場所で輝いてこそ野球選手。高校を卒業して10年目の2022年。武田健吾は今まさに旬を迎えようとしている。

yamadennis (@yamadennis) | Twitter