ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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振って振らされ、それでも振って〜鵜飼航丞の苦悩が晴れた!

○4x-3巨人(11回戦:バンテリンドーム)

 巨人の先発は初顔合わせのアンドリース。真っ直ぐとチェンジアップによる緩急が持ち味で、奪三振能力が高いという、いかにもドラゴンズが苦手なタイプの投手だ。

 おまけに肩の状態が万全ではないビシエドが今季初となるベンチスタート。ある程度の苦戦が予想されたが、プレイボール間も無くして思わぬ展開が待っていた。1死二塁として鵜飼航丞の痛烈なピッチャーゴロがアンドリースの左脚に直撃。そのまま2番手・菊地大稀が登板となり、アンドリースはわずか13球でのお役御免となった。

 巨人としては想定外のスクランブル態勢に入ったわけだが、かといってドラゴンズ側が優位に立てるかと言えば必ずしもそうではない。ダメで元々、開き直って投げてくる2番手、3番手の投手を打ち崩すのは案外に難しいようで、この手の展開は得てしてもつれた試合になるものだ。

 たとえば1999年には川上憲伸のアクシデント降板で急遽マウンドに上がった古池拓一が……なんて昔話は置いといて。

 この日も2回裏、相手のエラーでもらった1死満塁のチャンスを逸した時点で心理的なアドバンテージは消えたも同然。巨人に勇気を与える拙攻となってしまったが、とりわけ1死から空振り三振に倒れた鵜飼の失意に満ちた表情は印象的だった。

 ご存知の通り、先の交流戦において9打席連続三振という不名誉な日本タイ記録(野手のみ)に並んでしまった令和のブンブン丸。積極的なスイングが売りとは言え、オープン戦の時期までは “打撃スタイルとは裏腹の三振の少なさ” が評価されていたことを思うと、最近の三振数はあきらかに過剰気味といえよう。

 今日だってそう。第1打席こそ投手強襲の内野安打を放ったものの、第2〜4打席は3打席連続で空振り三振。それを承知で使っているとはいえ、やはり我慢の限界はある。ましてや同点に追いつき、わずかな守備ミスも許されない終盤戦に突入するというタイミングだ。内容だけ見ればこの回で鵜飼はベンチに下げられてもおかしくなかったと思うが、立浪監督は動かなかった。

 いや、むしろ同点に追いついたからこそ代えなかったと見るべきか。ジャリエル、ライデルという桁外れの奪三振率を誇る2枚看板擁するドラゴンズが勝ち切るには、守備を固めるよりも攻撃力に重きを置くのは妥当な判断だ。

 特に1点をめぐる攻防において、一振りで試合を動かせる鵜飼の打棒は大きな武器となる。たとえ確率は低くとも、当たれば飛ぶ。その鵜飼の長所に懸けたベンチの判断は、みごとに報われることになる。

 9回裏、先頭の鵜飼はビエイラの投じた158キロのストレートを強振すると、打球はぐんぐん伸びてフェンスに到達。サヨナラの機運を高める二塁打にベンチも大盛り上がり。それに応えるように塁上でガッツポーズをみせた鵜飼の明るい表情は、ここ一ヶ月ほど続いた苦悩が一気に晴れたかのような解放感に満ちていた。やはり野球選手にとって結果に優る良薬はナシという事か。

 振って振らされ、それでも振って……ようやく出た24打席ぶりの長打。9打席連続三振がなんだ。鵜飼航丞は、これでいいのだ。

京田の “足” は試合の行方をガラリと変える力がある

 サヨナラ勝ちは最高だ。まして逆転ゲームでのサヨナラとくれば、代え難い悦びがあるものだ。1点を追う6回裏、先頭の京田陽太がアウトローへ沈むシンカーをうまくセンター前に運んで出塁。さらに続く代打・三好大倫への初球ですかさず走って盗塁成功。相手バッテリーに考える余地すら与えぬ速攻がこのあとの同点劇を生むきっかけになった。

 打てない、打てないと言われ続けてきた京田だが、新人王を獲ったルーキーイヤーと比べて物足りないのは打撃よりもむしろ走塁の方ではないか。盗塁数は23→20→17→8→6個と減少の一途をたどり、今季はここまで盗塁なし。怪我の影響があったにせよ、“非・機動力” はパワーに乏しい選手としては致命的な泣きどころになる。

 その京田が復帰2戦目でみせた完璧な盗塁。「タラレバ」になるが、これが無ければ今日は2-3のままゲームセットを迎えていた可能性が高かった思う。京田の “足” は試合の行方をガラリと変える力があるのだと、あらためて実感したのだった。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter