ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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ロメロの恩返し〜3年後のそれぞれ

●0-2千葉ロッテ(3回戦:ZOZOマリンスタジアム)

 ロメロの調子がいいとは風の便りで聞いていた。エンニー・ロメロ。与田監督初年度にあたる2019年に中日に入団し、規定投球回には未達ながら8勝10敗とまずまずの成績をマーク。しかし更なる飛躍が期待された翌年のオープン戦で左肩を故障し、リハビリのため帰国したまま復帰することはなく契約の打ち切りが発表された。

 中日で活躍した期間は短いが、その割に印象深い選手でもあった。ロメロを象徴するシーンといえば2019年5月2日。平成から令和へと元号が移り変わったその翌日の東京ドームの巨人戦で、先発のロメロはある暴挙を働いてしまう。

 1点リードで迎えた5回裏、まず岡本和真の天井直撃弾で同点とされると、さらに一、二塁として陽岱鋼の勝ち越し3ランを浴びた、まさにその瞬間だった。ロメロは打球の行方を最後まで追わず、はめていたグラブを思い切りマウンドに叩きつけたのである。悔しいのは分かる。だが商売道具に当たるのはよくない。それも神聖なグラウンドでやるのは完全にNG行為だ。

 このシーンが象徴するように、ロメロは良くも悪くも感情の起伏の激しい投手だった。ランナーを出すとストレート一辺倒になる悪癖が災いし、序盤で炎上したり、5回まで投げ切れずに降板することも多かった。ただ、光るモノを持っていたのは間違いないし、これから磨いていこうというタイミングで故障してしまったのはお互いにとって不幸なできごとだった。

 そのロメロが日本球界復帰を果たしたのが昨年の6月のこと。メキシカンリーグでプレーしていたところをスカウトしたようだが、本当に目の付け所がいい。何しろ故障さえなければドラゴンズは大野雄大と並ぶエース格として扱う予定だったのだから。

 復帰後は4試合に投げて防御率1.54。最後は疲労蓄積で離脱したものの、次年度の飛躍を大いに予感させる活躍をみせた。そして今季、ロメロは開幕から好調を維持し、遂に今日古巣ドラゴンズとの対決を迎えたわけである。

「3年」という月日は色々な事が大きく変わるには十分すぎる時間なのだろう

 ひと回り大きくなったのは体格だけでなく、何となしに表情にも余裕が生まれ、人間的な成長を感じたのは気のせいではないだろう。ストレートの比率が極端に高いのは昔のままだが、威力も制球もあの頃とは段違いだ。

 3回までノーヒット投球。4回表に1死から大島洋平がようやく初安打を放つも、続くアリエルの打席は最悪の三振ゲッツー。5回表は無死で出たランナーを併殺で生かせず、6回表はまたしても1死一塁での三振ゲッツーでロメロを助ける拙攻地獄。

 足を使って短気なロメロを内面から揺さぶろうとする作戦は間違いではないが、普段やり慣れていないことをやろうとしてボロが出たのはこちらでした、という笑えないオチが付いた。そもそもドラゴンズのミスは、制球に不安のあるロメロ相手に早打ちしてしまったことではないか。8回101球。さぞかしロメロは気持ちよく投げたことだろう。

 ロメロが8イニングを投げ切ったのは中日時代を含めて来日後最長。2日連続二桁安打の中日打線を5安打零封に抑えたのは間違いなくロメロ自身の実力によるものだ。とはいえ色々と攻め方をミスった感は否めない。まあ、なんにせよ3併殺では勝ち目なし。

 旧友の思わぬ成長に戸惑ったかのような完敗。ソフトバンクに勝ち越した直後、パ・リーグ5位のロッテに3タテを食らうのはいかにも中日らしい。おまけにロメロだけではなく、9回表には加藤匠馬が出場。自慢の肩を披露するまでもなく三者凡退に退き、こちらも “成長” を見せつけられるハメになった。

 そういえば例の “グラブ投げ” のときにマスクを被っていたのがカトちゃんだったのを思い出した。あの頃まさか加藤がロメロ共々3年後にロッテで奮闘しているとは夢にも思わなかったが、一番の驚きは木下拓哉がリーグ屈指の正捕手になったという事実。

 そして根尾昂が投手に本格転向するかもしれないという仰天の事態も、今はまだうまく飲み込めずにいる。なんにせよ「3年」という月日は色々な事が大きく変わるには十分すぎる時間なのだろう。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter