ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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昔の名前で出ています~45歳・福留孝介に漂う晩秋の侘しさ

●2-6千葉ロッテ(1回戦:ZOZOマリンスタジアム)

 勝てる試合だった、と悔やんだところで負けは負け。相手を上回る12安打を打ちながらわずか2得点に留まったことや、2死から逆転弾を浴びたのは「もったいない」とは思うものの、相手だって抑えるつもりでボールを投げ、打つ気満々でバットを握っているのだから結果は真摯に受け止めるしかないだろう。

 ただ、その中でも疑問符が付く部分はある。今日で言えばそれは、おそらく中日ファンの10人に10人が「代打・福留孝介」と答えるに違いない。試合をひっくり返された直後の7回表である。先頭の岡林勇希が鋭い当たりのツーベースで出塁。大島洋平が難なく犠打を決め、ここで打順は3番・高松渡に回ってきた。

 必然的に代打が告げられる場面だが、ベンチに残っている中で控え捕手の桂依央利、守備堅めの加藤翔平を除けば誰が指名されてもおかしくはない。5日のソフトバンク戦で殊勲打を放ったばかりの溝脇隼人、外野フライでも1点が入るのだから福田永将という選択肢もアリだろう。とにかく劇的な本塁打よりも、まずは目先の1点という局面。ここで立浪監督が選んだカードは--背番号9、福留孝介だった。

 5月26日の西武戦でようやく今季初安打が出たとはいえ、22打数1安打、打率.045ではいくら福留シンパの私とて信頼を貫くのは難しい。ヒットが出ないだけならまだしも、少ない分母で既に10三振を喫しているのは言い訳できない。かつて視力検査で驚愕の数値を幾度となく叩き出した動体視力の衰えを疑わざるを得ない状態である。

 ロッテはすかざす石川歩に代えて東條大樹を投入。プロ7年目にして覚醒しつつある安定感抜群の右腕だ。特に左打者にはめっぽう強く、被打率.170、53打数16三振と無双状態。初見での攻略は極めて難しい相手に対し、絶不調の福留がどこまで喰らい付けるか。昔の福留ならそれでも無理やりバットに当てていたと思う。

 しかし45歳になった福留は成す術もなく、ほぼ無抵抗にわずか4球で空振り三振を喫し、アウトカウントを一つ増やしてベンチに戻ることしかできなかった。もう “コースケ” なんて呼び方が似合う年齢でもなくなり、昔と変わらぬ飄々とした表情や仕草もどこか物寂しく見える。男の晩秋とはかくも侘しいものなのか。

 高音が出せなくなったかつてのスターが、聴くも無残な歌唱を晒すように……いつのまにか福留も「昔の名前で出ています」という選手の一人になってしまったのかもしれない。

根尾には “ここぞ” のチャンスがよく似合う

 昔の名前で出る選手もいれば、今まさに売り出し中の選手もいる。果たしてこの若者を「売り出し中」と表現するのが適切かどうかはともかく、次代を担ってくれなければ困る選手であることに間違いはない。4点ビハインドと実質的に終戦ムードが漂う9回表、根尾昂が代打で久々のヒットを放った。

 最近はもっぱら投手での起用が話題にのぼるが、打席での期待値は依然としてチーム屈指だと私は見ている。もし先のチャンスで福留ではなく根尾が出ていればどうなっていたか。そんなことは分からないし、考える意味もない。ただ、根尾には “ここぞ” のチャンスがよく似合う。

 大差のついた終盤の、ランナー無しという場面で使うためにドラフト1位で指名したのか? いや違う。痺れるような場面で使ってこそ輝く選手。それがスターというものだ。ならば根尾は、やはり無謀と言われようともチャンスで起用すべきではあるまいか。

 そんなものは甘やかしだ、実力で奪い取れという意見はご尤も。でも甘やかして育つならそれでいいじゃん。と、ゆとり世代に片足突っ込んでる身としては思ったりもするのである。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter