ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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常勝ホークス撃破〜隙をつく好走塁と、マスター阿部の躍動

○7-3ソフトバンク (3回戦:バンテリンドーム)

 普段あまり見る機会のない選手をじっくり観察できるのが交流戦の醍醐味だが、ホークスとの2試合で印象に残ったのがセンターを守る柳町達だった。

 目下パ・リーグの打率3位に付ける巧打はさる事ながら、安定感のある守備、特に強肩はひときわ光彩を放つ。3年目にして覚醒しつつある慶応ボーイの存在は、このカードの勝ち越しを狙う上で難敵になるぞ。そう思っていた矢先、下半身のコンディション不良のため出場選手登録を抹消されることが試合前に発表された。

 代わってセンターに入ったのは打撃好調の周東佑京。こちらも俊足を生かした守備範囲の広さは平均以上だが、肩の強さでは柳町より劣る。レフトのグラシアルは同ポジションのUZRで現時点のリーグ最下位(規定到達のみ)と低迷しており、またライトの柳田悠岐も基本的には守備の上手い選手とは言い難い。同僚の栗原陵矢が(もちろん冗談半分で)異議を唱えた昨季のゴールデングラブ賞受賞は、完全にイメージ先行によるものだろう。

 つまりこの日のホークスの外野陣は明確に “不安” といえる布陣で、広いバンテリンドームでは命取りになる恐れもある。言い換えればドラゴンズにとっては付け入る隙があるということ。事実、ドラゴンズは以前にも巨人・ウォーカーの拙守を狙い撃ちして勝利した実績がある。

 がっぷり四つに組めば力負けするが、弱点を責めることで形勢逆転は可能。おそらく試合前ミーティングでも意思統一が為されていたのだろう。いざプレイボールがかかると、初回からドラゴンズはこの隙を見事につく攻撃で一挙3点を奪って逆転に成功した。

 一塁から長駆生還したアリエル、阿部寿樹の全力疾走も見事ながら、8回裏の高橋周平のホームインまで腕をぶん回し続けた大西三塁コーチこそが影のヒーローと言えるのかもしれない。

元々は「守備の人」がリーグ屈指の巧打者に成長

 そうは言っても、ヒットゾーンに飛ばさなければ隙を突くこともできないわけで。やはりこの日最大の殊勲者は阿部寿樹を置いて他にいないだろう。

 初回2死二塁からの勝ち越し打、1点差に迫られた5回裏の貴重な追加点も、やはり2死からの一打だった。凡退すれば流れは一気にホークスに傾くという局面での2本のタイムリーは、日ごろ “あと一本” に泣かされ続けている中日ファンにとって、まさしく快哉を叫びたくなるナイスバッティングだった。

 一時期調子を落としたものの、ここにきて復調。この日の猛打賞で打率も再び3割目前まで上げてきた。なんといっても今季バンテリンでの17勝のうちお立ち台はこれで5回目。実はホームでの打率.262と印象の割に控えめな数字が残るが、その分 “ここぞ” でのいい仕事が光る。

 いい仕事といえば守備での貢献も外せない。7回表、暴投で招いた1死二塁のピンチでセカンドライナーを取るや素早い送球で二塁走者を封殺。間一髪のタイミングにはリクエストもかかったが、判定は変わらず。結果的にはこのプレーが流れを決定的に呼び込んだ。

 去る5月31日の楽天戦でも阿部の攻守で併殺を奪い、絶体絶命のピンチを脱したのは記憶に新しい。もしあれが一瞬遅かったら……。その “一瞬” を卒なくこなすのがマスター阿部のプロフェッショナル。さすがアマ時代は堅守で鳴らしただけのことはある。

 そう、元々は「守備の人」という触れ込みでの入団だったのだ。何しろアマ時代は大学、社会人を通じて本塁打ゼロ。その選手がプロ入り数年を経てリーグ屈指の巧打者に成長するのだから、分からないものだ。

 思えば2019年春、与田ドラゴンズの初陣で開幕セカンドに抜擢された時にはサプライズ扱いされていたのが懐かしい。あれから3年が経ち、今では無くてはならない存在になった。パ・リーグ1,2位球団の連続撃破という快挙の立役者は間違いなくマスターだ。

 冒頭で、別リーグの選手をじっくり観察できるのが交流戦の醍醐味と書いたが、ホークスファンは「阿部寿樹」の名を脳髄に叩き込まれたことだろう。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter