ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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哀愁の背番号3〜勝つために不可欠な周平復活

●0-8-オリックス (3回戦:京セラドーム大阪)

 その昔、「join us~ファンと共に~」をスローガンに掲げた高木ドラゴンズが立ち上がった際、一部のマスコミの間でしきりに使われたのが “負けても楽しい野球” というフレーズだった。

 若いファンには意味が伝わりづらいと思う。要するに落合監督の時代は無機質で血の通った野球とは言い難く、勝っても負けてもつまらなかったという反・落合感情から来る意趣返しなのだが、そこから10年も楽しさとはかけ離れた低迷期を迎えるのだから皮肉な話だ。

 勝負事である以上は勝利以上の喜びなどあり得ない。そんな当たり前のことさえ見失っていたあの頃。結局、 “負けても楽しい野球”  なんてモノは幻想に過ぎず、ドラゴンズは今なお悲壮感を漂わせながら “勝利” の二文字を求めて彷徨い続けている。

 ただ、今日の8回表の光景は、少なからずファンに楽しさを提供したとも言えるのかもしれない。8点ビハインドという大差で迎えたこのイニング。典型的な負け試合の中で、ブルペンに残っていたのは昨日投げた投手ばかり。ジャリエル、ライデルは論外として、開幕からフル回転の清水達也、山本拓実も極力休ませたいところだ。

 強いていえば祖父江大輔を調整で投げさせるのはアリかも知れないが、できれば連投は避けたいのが本音。となると、考え得る選択肢はただ一つ。そう、投手・根尾昂の投入である。

「ピッチャー・根尾」のコールが鳴り響くや、ドラゴンズファンの大変な盛り上がりようは画面越しにも伝わって来た。あー、やっぱり根尾は特別な存在なんだ。大敗試合にもかかわらず、あれだけファンを喜ばせることができるのは古今東西見渡しても根尾くらいのものだろう。

 2試合続けて無失点に抑えたことで、今後の根尾の起用法にも注目が集まる。場合によっては本格的に投手転向なんて話も持ち上がるのかもしれない。だが、正直言って楽しみよりも不安の方が先に立つ。彼のポテンシャルを最大限に生かす最適解がショートなのか、外野なのか、あるいは投手なのかはまだ分からないが、根尾という特殊な才能を “見世物” にしてしまっては本末転倒だ。

 めずらしい光景に沸き立つ気持ちも否定できないが、できれば早い段階で道は一本に絞ってもらいたいと、個人的には思うのである。

眉間にしわ寄せながらプレーする姿にはなんだか哀愁すら漂う背番号3

 中日ファンの未来への期待を高橋周平が一身に背負う。根尾が出てくるまで、そんな時代が間違いなくあった。2016年に有鈎骨を折るまではスラッガーとして、2020年までは巧打者としての覚醒を誰もが待ち詫びていたものの、ここ2年ほどは深刻な低迷が続いている。

 打率は2割3分台で、二桁本塁打は夢のまた夢。10年前のファンがこの未来を知れば、「期待していたのはそんな姿じゃない」と愕然とするはずだ。

 チーム事情とはいえ慣れないショートを守ったり、またサードに戻ったりと同情すべき点はある。だが、それを言ったら背番号3の先々代だってなかなかのものだ。

 ショートに始まり、セカンド、レフト、またセカンド。2001年には一瞬だけショートに就いたこともある。当時は今ほどインターネットが普及していなかったので話題にすらならなかったが、昔の選手の起用法は現代じゃ考えられないほど雑だった。

 そんな立浪の “終の棲家” になったのがサードだった。途中、一時的にレフトに回ったりもしたが、2002年以降の本職は基本的にサードだ。転向2年目の2003年には史上初の3ポジションでのゴールデン・グラブ賞を受賞。

 しかし2004年から監督を務めた落合博満はその守備範囲が日に日に狭くなるのを見逃さなかったーーというのは名著『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』(鈴木忠平,文芸春秋,2021)からの受け売りである。

 この時、立浪は既に30代後半に差し掛かっていた。一方で高橋周平はまだ28歳。2019,2020年と2年続けてGG賞を受賞した名手も、昨季からやけにミスが目立つ。そして今日も、致命的な3回裏の失点は高橋の握り直しから始まった。

「周平よぉ、打撃はともかく、守る方はしっかりしてくれよ。まだまだ老け込む年齢じゃないだろうよ」

 昼下がり、中継を見ながら思わず嘆いてしまった。眉間にしわ寄せながらプレーする姿にはなんだか哀愁すら漂う背番号3だが、ああ見えて神木隆之介、山田涼介とタメ。ほら、急に若手に見えてきた。

 根尾のポジション探求の旅だけではなく、私は周平のこともまだ全然あきらめちゃいない。もう見切りを付けた方がいいって? ご冗談を。勝つために、周平復活は不可欠なのだ。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter