ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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うなだれる高橋宏斗に見た、昇龍ロードの途上

●1-2西武(2回戦:バンテリンドーム)

 トンネルの出口には今日も辿り着かなかった。3年ぶりの7連敗。「8」まで伸びた2019年は、8連勝からの8連敗という滅多にないような急上昇、急降下だったのでよく覚えている。対して今回は直近1勝10敗。5点取ったら8点取られ、2点に抑えれば1点しか取れない。絶望的に嚙み合わない投打がもどかしい。

 この日の先発は高橋宏斗。10日間の抹消期間を経ての登板となったが、プレイボールがかかるや豪速球が唸りを上げ、切れ味鋭い変化球が冴えわたる。初回を3者連続三振と抜群のスタートを切ると、その後も奪三振ショーは止まらず、終わってみれば6回8奪三振。2失点はしたものの、パ・リーグ相手にも問題なく通用するところを見せつけた。

 打線は初回、先頭の岡林勇希が7球粘って三塁打を放つと、続く2番・鵜飼航丞の犠飛で先制する幸先良いスタート。若い力が躍動し、連敗ストップも間違いなしだがやー-。そんなポジティブな感情も、イニングが進むにつれどんより曇ることになろうとは、想像だにしなかっ……いや、ぶっちゃけ想像もしたし、覚悟もしていた。ただ、最後まで0行進が続いたのは正直想像を超えていた。まさかここまで深刻とは。

 高橋は頑張った。そりゃ2失点を責める人なんて誰もいないよ。前回の巨人戦ではリードして降板したあとにリリーフが打ち込まれて大逆転負け。査定では2勝分を加算して欲しいと切に願う。

 ラストイニングの6回表、1死一塁で昨日のヒーロー・呉念庭を空振り三振に抑えた場面はシビれた。150キロ台のストレートを3球続けた後、スプリットを2球続ける配球は、まさに三振を取るためのそれ。言い換えれば、狙って三振が取れるからこそ女房・木下拓哉も強気の配球を組めるのだろう。

 100球を超えても150キロ台を連発しているところを見ると、体力的な問題は既にクリアしているように思える。一昔前なら、馬車馬のように投げまくっていたことだろう。しかし令和の世でそれは許されない。肩肘のコンディションを最優先にした、いわゆる “投げ抹消” が当たり前の時代である。

 このクオリティの投手を週一で見られないのは残念だが、今はとりあえず “二週間に一度のお楽しみ” として、次回登板を待ち詫びておこう。

負けて笑顔を浮かべる選手はいなかった

 9回裏は4番・ビシエドから始まる打順とあって期待も大きかったが、わずか12球で歓声はため息に変わった。失投をミスショットし、レフトフライに倒れたビシエドは悔しそうにバットを振り下ろした。センターフライを打ち上げた阿部寿樹は、息絶えそうな表情で天を見上げた。ベンチでは、高橋宏斗が顔を腕の中にうずめたまま動けなくなっていた。

「負けてる時にベンチで笑ってる選手がいるとかね。それはちょっと考えられないですね」

 立浪監督は就任直後から勝利への気迫を選手に求めてきた。負けても笑顔を浮かべる選手がいる。たしかに星野や落合の政権下ではあり得なかった光景だ。

 勝利への執念を意識づけ、敗北への悔しさを叩きこむ。まだ就任から半年ほど過ぎたばかりだが、7連敗を喫した瞬間のベンチの様子を見る限り、あの宏斗の悔しがり方を見る限り、このチームには気のたるみとか、負け慣れといった惰性は確認できなかった。

 つまり、選手たちは勝つために必死に努力をしている。負けて笑顔を浮かべる選手は、今のドラゴンズにはいない。当たり前のことではあるが、それが分かっただけでも7連敗の空虚さは少なからず拭うことができた。

 高橋宏斗を筆頭に、リードオフマン・岡林、和製大砲・鵜飼、フェンス直撃を放った石川昂弥と楽しみな若手は揃っている。この経験を共有し、糧にしながら、彼らは日々強くなっていく。キツいけど、これもまた昇龍ロードの途上なのである。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter