ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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無謀? 高橋周平ショート起用のときめきと現実

●5-8西武(1回戦:バンテリンドーム)

「個人的には好き。実用的かどうかはともかくとして」

 高橋周平のショート起用に対する偽らざる本音である。21日の広島戦でお披露目された8年ぶりの「ショート・高橋」は、大敗の試合だからこそできる一種の “お試し” だと解釈していた。

 しかし、今朝の中日スポーツを開いてビックリ。「超攻撃的布陣」という見出しと共に、1面を飾ったのはショートを守る高橋の写真だったのだ。

 記事にはこうある。

「二塁なら阿部は左翼へ。そうなるとアリエルと競合になる。阿部とアリエルの勝負強い打撃は捨てがたい。かといって高橋をベンチスタートさせるのももったいない。この連立方程式の解はひとつだけ。遊撃に高橋をもってくると、二塁阿部、三塁石川、左翼アリエルと全員が収まる」

 その連立方程式を無理やり解く必要はあるのか? というツッコミは置いておくとして、超攻撃的布陣とやらを見てみたい気持ちは確かにある。要するにナゴヤ球場時代のような野球をバンテリンドームでやろうという試みだ。

 1998年以降、“守り勝つ野球” を旗印に掲げてきたドラゴンズにとって、とりわけショートは守備の要として機能してきた。久慈照嘉から井端弘和へ、そして京田陽太へと受け継がれてきた遺伝子。それをかなぐり捨てて高橋に任せようというのだから、ファンの心理的動揺は半端ではない。SNSでも「無謀な賭け」だと切り捨てる意見が目立つのも、そりゃそうだろうなという感じだ。

 ただ、あくまで個人的な意見にはなるが、攻撃極振りの打線は一度見てみたかった気持ちもあるので、決してキライではない。というか、むしろ好きだ。「5点取られたら6点取れば勝てるがね」という野球は、伝統的なドラゴンズのスタイルでもある。荒々しい野武士野球が令和の世に見られるなんて思っていなかっただけに、心ときめくのは否定できない。

 ただし、ときめきと実用性は別問題だ。「サードと見る方向や角度は基本一緒」(立浪監督)とは言え、ショートは付け焼き刃で守れるようなポジションではないのは明白。三ツ俣大樹に痺れを切らした立浪監督が、高橋の拙守をどこまで我慢できるのか。

 仮に高橋が20本も30本もアーチをかけるような強打者ならともかく、ショートを守らせてでも使いたくなるような打撃成績かといえば……正直そうではない。それでも立浪監督が無謀な賭けに打って出たのは、停滞する現状へのカンフル剤という意味合いが大きいだろう。

この日の結果だけで「ショート・高橋周平」を撤回すれば、方針のブレが悪目立ちする

 報道どおりショートには高橋が、レフトにはアリエルではなく、この日から一軍復帰の鵜飼航丞が就いた。

 打線の迫力は、源田壮亮(抹消中)、中村剛也、森友哉といった顔ぶれがスタメンを外れた西武よりもむしろ上。序盤から4点ビハインドを追う苦しい展開になったが、すぐさま3点返すあたりは指揮官の戦術が的中したかにも思われた。

 その矢先である。4回表、1死一塁として滝澤夏央のショートゴロを高橋がファンブルし、ピンチを広げてしまう。その直後にオグレディのこの日3打点目となるタイムリー二塁打が飛び出して万事休す。適切に処理していればダブルプレーもあり得ただけに、痛すぎるエラーとなった。

 急造ショートの高橋を責めるのは酷だろう。それにしても、よりによって初日から試合の流れを決定づけるエラーを犯してしまうとは、野球はつくづく残酷だ。高橋がノーヒットに終わり、ポジションを譲る形になった根尾昂が代打でヒットを打ったのも皮肉だった。だからと言って、この日の結果だけで「ショート・高橋」を撤回すれば、方針のブレが悪目立ちするし……。

 果たして明日は誰がショートを守るのだろうか。中村紀洋コーチの異動人事ともども、ざわつく日々が続く。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter