●6-7DeNA(8回戦:バンテリンドーム)
地獄から天国へ。そしてまた地獄へー-。0-5での敗北ならあきらめも付くが、なまじ追いついただけにショックも大きい。これでこのカードは1勝7敗。バンテリンドームでは0勝5敗という屈辱的な数字が並ぶ。
他球団相手には借金を積み重ねるDeNAが、なぜドラゴンズ戦だけこうも元気になるのか。逆に言えば、なぜ上位球団とも互角に渡り歩くドラゴンズが、DeNA戦ではこうも劣勢を強いられるのか。はっきりとした理由は分からないが、このカードはとにかく “ここぞ” での脆弱さが目立つ。
なんとしても1点を防ぎたい場面では2点、3点を奪われ、自慢の投手陣が次々と打ち砕かれる。今夜でいえば7回表、祖父江大輔は2死までこぎつけたものの、あと1アウトを取る間に死球、タイムリー、押し出しで2点を失った。松葉貴大にしても、簡単に2死を取ったあとの4失点である。
バッターの打率はせいぜい3割。3回に2度はアウトになるはずなのだが、なぜかDeNAの各打者は “ここぞ” になると必ず打つし、ドラゴンズ投手陣は打たれる。相性なんてのは理屈を超越した不可思議なモノなのかも知れないが、いったい本当に何なんだろう。
ペナントレースにおいて苦手を作ることは禁物。甲子園の阪神、そしてDeNAと苦手が二つもあるドラゴンズの借金転落は、必然と言わざるを得ない。
この負けが将来への豊かな投資になるのであれば……
淡々と負けた昨夜に比べれば、一時は5点差を追いついたくらいだから見どころもあった。特に試合途中からショートに入った根尾昂にはワクワクが止まらなかった。
何しろ5点のうち2打点をあげる活躍で、追い上げムードを盛り上げた4回裏のタイムリー二塁打は今夜のハイライトといっても過言ではない。先日の東京ドームでは2打席連続タイムリーを放つなど、今や一軍でも比較的期待値の高い打者になりつつある。入団以来の課題だった三振率が大幅に低下しているのも “進化” の証といえる。
ただ、立浪監督も言うようにショートは守りが第一。根尾の場合は身体能力を生かしたダイナミックなプレーこそ魅力にあふれているが、まだ球際の弱さや、基礎的な動きに無駄が多いのは否めない。突き放された7回裏の一連の判定は、根尾でなければ(というより京田陽太ならば)アウトになっていた打球もあっただろう。
かつて本職ショートで鳴らした立浪監督もそのあたりはシビアに見ているはずだ。だが、ライト→ショートというアクロバティックな采配を振るった時点で、ある程度は腹を括っていたとも思える。
今回の昇格は主力のコロナ感染に伴うやむを得ない措置であり、まだ二軍でやり残したことがあるのは最初から分かっていたことだ。それを承知で一軍で起用するからには、細かいミスには目を瞑る覚悟が必要となる。どんな選手も最初はミスをするし、ミスを通して成長を見守るのがプロ野球鑑賞の醍醐味でもある。
選手・立浪だってそうだ。入団当初から天才的な守備で宇野勝を圧倒し、一年目からゴールデングラブ賞を獲得というストーリーばかりが語られがちだが、実は開幕時点では「なんだかんだで未熟。宇野との差は歴然」というのが世評であった。
このブログではしつこく語っているように、選手の成長に不可欠なのは指揮監督の我慢強さ、そして覚悟だ。言うまでもなく立浪監督にはそれがある。もしかしたら今夜の試合は根尾をショートに回していなければ負けることは無かったのかもしれない。だが、この負けが豊かな将来への投資になるのであれば、甘んじて受け入れようではないか。
今週から来週にかけて離脱組が戻ってくるなかで、果たして根尾は二軍での訓練を指示されるのか。あるいは引き続き英才教育を受けることになるのか。いずれにせよ、2020年代のドラゴンズは根尾昂と心中する運命にある、と私は考えている。
守備に就いただけでトレンドに上昇し、一挙手一投足が話題になる。もっと見ていたいと思わせるスター性は、理屈ぬきの天性だ。まだ拙い面もあるものの、ショート根尾昂がドラゴンズ最大のエンターテイメントであることに疑いの余地はない。