ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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既視感との戦い〜イヤなムードに蹴りをつけたビシエド、アリエルのアベック弾

○9-3巨人(9回戦:東京ドーム)

 3回終わって5対0。スコアだけ見れば楽勝だが、穏やかな気持ちで観戦できたファンは少ないのではないだろうか。私はもちろん心臓バクバク。イニングを重ねて勝利が近づけば近づくほど、むしろ緊張感は増す一方だった。

 既視感のしわざである。5点差からの逆転負けという滅多にない悲劇の余韻が、球場内には残り香のように漂っていたのだ。

 だからオレンジに身を包んだファンは、「昨日の再現だ!」とばかりに意気消沈することなく集中して応援していたし、逆に青い方のファンは、巨人がヒットを打つたびに、なんとなしにイヤーな汗をかきながら戦況を見守るしかなかった。

 先発の柳裕也は初回こそ31球を要する厳しい立ち上がりとなったが、その後はテンポよく凡打の山を築き、5回まで3安打無失点と本来の実力を発揮。今季2試合で防御率7.82と打ち込まれている巨人に対し、ようやくリベンジを果たした格好だ。

 ただ、柳であっても何が起こるか分からないのがこの球場である。きっかけ一つで猛打が目覚める危険性は常に付きまとう。いわんや昨日の今日となれば、巨人サイドもまんざらではないという感じで攻めてくるはずだ。

 5点差だと昨日の悲劇が頭をかすめるが、6点差になれば厄介な既視感は消え去り、たちまち「セーフティリード」だと考えることができる。喉から手が出るほど欲しかったのは「次の1点」だ。

 6回表、2死三塁。無死からのランナーを生かせないとなると、いよいよイヤな流れになりかねない。打席には悩める主砲・ビシエド。ここにきてようやく当たりが出始め、打順も本来の4番に戻った。ここらで強烈な一発が欲しいところだ。

石川昂弥、鵜飼航丞の和製アベック弾からちょうど一週間

 カウント1-1からの3球目、低めストレートだった。一振りで捉えると、ビシエドらしい低い弾道で伸びる打球が、瞬く間にレフトスタンド前列に突き刺さった。

 1点どころか2点を追加し、スコアボードには大きく「7」が刻まれた。お祭り騒ぎの中日ファン。一方で、この一発を機に巨人ファンのボルテージは明らかに減退。その数秒後にアリエルにも一発が飛び出すと、気の早いファンが球場を立ち去るのも目についた。外国人コンビによる相手の戦意を削ぐ一発。これぞまさしく “助っ人” の仕事である。

 石川昂弥、鵜飼航丞の和製アベック弾からちょうど一週間。ビシエド、アリエルのアベック弾もまた、ドラゴンズの新名物になるかもしれない。

 さすがに8点リードなら勝ったも同然……なのだが、いわゆる「今日は、ドラゴンズ大丈夫だね。」の可能性も無くはないので、最後まで油断は禁物。その危惧が的中するかのように、6回裏にポランコ、増田陸の一発攻勢でたちまち6点差に詰め寄られてしまう。

 特に巨人ファン期待の増田のプロ初本塁打は、沈滞ムードを一気に吹き払いかねないインパクトがあった。それだけではない。長嶋茂雄終身名誉監督の来場、丸佳浩の通算1500安打など、今日は巨人ファンをアゲるイベントが随所に散りばめられていた。

 もしリードがもう少し小さければ、こうしたイベントを着火点にして昨日と同じような展開になっていてもおかしくなかっただろう。6点差の9回裏など本来は余裕綽々のはずなのに、なぜか緊張感が漂っていたのも妙な感じだった。

 何しろこのチームはつい数年前に10点差をひっくり返され、また最終回に6点を失いサヨナラ敗戦したことがあるのだ。久しく忘れていた数々のトラウマが亡霊のように蘇ってきた昨日の敗戦。

 ただ、今のドラゴンズはもうあの頃とは違う。悪い流れを引きずらず、逆境に打ち勝つ強さを身につけたのだ。若手が躍動し、中堅、ベテラン、外国人が支える。理想的な勝ち方で週の最後を締め、借金転落を阻止。ドラゴンズは、逞しくなった。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter