●2-5巨人(7回戦:東京ドーム)
打てないのは分かっていたことだが、このタイミングでのビジター6連戦はどう考えてもキツイ、キツすぎる。この4試合で2点以上取ったイニングはなし。つまり1点取るのがやっとの状態で、投手陣が踏ん張るしか勝ち筋は無いのだ。
その投手陣が打たれてしまえば、唯一の勝ち筋は途絶えることになる。大野雄大は先頭打者アーチを浴びながらも6回2失点と役目は果たした。ただ、その間追いつくのがやっとでは、この球場で勝ち切るのは難しいと言わざるを得ない。
今朝の中スポは「今こそアピールチャンス 若竜奮闘」という見出しで、中前打を放つ伊藤康祐の写真が一面を飾った。たしかに昨夜活躍した伊藤、この日タイムリーを放った石橋康太など若竜の躍動はチーム力の底上げに繋がるだろうし、長い目で見れば貴重な経験になるだろう。
なのに若竜が奮闘しても得点につながらない不思議。貧打の根本的な原因は若手中心の打線そのものよりも、残ったレギュラー陣の不甲斐なさの方にあるのではないかと感じている。
具体名をあげれば高橋周平、阿部寿樹、そしてビシエド。マスターには開幕当初に散々お世話になったので心苦しいが、この非常時に不振に陥るのはタイミングが悪すぎる。ビシエドは待望の一発こそ飛び出したものの、まだ復調を確信するには至らない。高橋は……もはやこれが実力なのではとさえ思い始めている。今季打った9安打はすべて単打。OPS.465は、3番打者としては冗談にもならない数字だ。
経験の浅い若手を引っ張らなければならない立場の彼らが、チャンスで凡退を繰り返す姿は見たくない。「若竜奮起」もいいが、むしろ奮起してほしいのは中堅・ベテランの方。球数も多く、苦しむ戸郷翔征にみすみす白星を献上するようでは「レギュラー」の名が廃るってもんだ。
入団4年目を迎えてもネームバリューは健在
投打ともに精彩を欠いた一戦。その中で目立ったのは、やはり背番号7。根尾昂だった。フルカウントから冷静に見極めて四球を選んだ1,2打席目は、何か余裕さえ漂わせていた。戸郷は同学年の、いわばライバルの一人だ。
プロ入り後の初対戦は2年前の3月、那覇での練習試合だった。このときは開幕ローテを目指していた戸郷の前にオール直球であっけなく空振り三振に倒れ、レベルの違いを思い知らされた。今やローテの一角にまでなった戸郷に対し、根尾はまだ一軍半から脱し切れていない。序列では負けるが、根尾だって無為に3年間を過ごしたわけじゃない。
守っては1回裏、ライト線の安打で二塁を狙ったポランコを正確な返球で刺し、球場を沸かせた。いわゆる “レーザービーム” というよりは、バウンドしながらもドンピシャで的を射抜くコントロールが持ち味だ。生真面目な根尾らしい、誠実な送球とでも言うべきか。
それにしても、だ。体付近へのボールを避けるダイナミックな動きなど、根尾ほど見ていて楽しい選手はそうはいない。きっと長嶋茂雄というのはこういう感じだったのだろうな、と思いを馳せるのはさすがに大袈裟すぎるか。見ていて楽しい選手といえば今はまだ “東の騙し屋” 市川和正にも及ばないが、もう少し打つ方で結果が出るようになれば、たちまちチームの元気印になるのは間違いない。
二刀流起用も話題を呼ぶなど、入団4年目を迎えてもそのネームバリューは健在。いよいよ本格的に一軍出場が増えれば、人気はますます上昇するだろう。憂鬱な敗戦のなかで、「スター覚醒近し」をはっきりと感じられたのが今夜の収穫、ということにしておこう。