ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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雨中の熱投~上田洸太朗まかりとおる!

●1-3ヤクルト(8回戦:明治神宮野球場)

 野球談議に華が咲くと、「いい投手とは何ぞや?」という話になることがある。この問いかけに対して私は必ずこう答えるようにしている。

「フルカウントからストライクを投げられる投手のこと」だと。

 エースと呼ばれる投手は皆、厳しいカウントになっても攻めの姿勢を失わないものだ。“歩かせるくらいなら勝負して打たれた方がマシだ”。これくらいのハートの強さがプロで成功するためには必要不可欠なのかもしれない。

 今夜の先発は上田洸太朗。2002年生まれ、高卒2年目の19歳はつい一週間前まで三桁の背番号を付けていた。7日におこなわれた支配下登録の会見では「サラリーマンみたいやな」と立浪監督からイジられ、同級生で高校時代からのライバル関係にある高橋宏斗からも「10年目みたいな顔してる」と、その年齢離れした落ち着きと風格を茶化される。

 やけにスーツの似合う上田が支配下登録を勝ち得たのは、低めへの制球力が決め手になったという。サウスポーとはいえ最速143,4キロはかなり遅い部類だが、それを補って余りあるほどの投球術とは如何ほどのものか。楽しみが膨らむ一方で、昼すぎから降り始めた雨が鬱陶しく思えて仕方なかった。

 せっかくの晴れ舞台に水を差す雨は、プレイボールのかかる18時頃には肉眼でもはっきりと捉えられるほど粒が大きくなっていた。ややもすれば雨天コールドもあり得るのではないか? いい具合に連勝したこともあり、内心「勝ち逃げ」に期待する気持ちも無かったといえばウソになる。

 ただ、そんな情けない願望を鼻で笑うかのように、上田は堂々たる風格を漂わせながらマウンドに上がった。緊張はあっただろうが、この投手はそれが顔に出ない。先頭打者の塩見泰隆に安打を許しても、動揺した素振りすら見せなかったのは大したものだ。しかし、ここから3連打でいきなり2点を失う苦しいスタート。同じ享栄高出身・近藤真一の伝説のデビュー戦の再現を期待する声もあったが、出鼻をくじかれた格好だ。

 それでも上田は折れなかった。続く4番・村上宗隆からプロ初アウトを空振り三振で奪うと、後続を断って追加点を許さなかった。並の初登板投手なら我を失い、まともにストライクを投げられなくなってもおかしくない。3連打からしっかりと立て直したのは最大級の評価に値すると思う。

 そしてハイライトは3回表、3四死球で2死満塁とし、打席にオスナを迎えた場面だ。フルカウントとして押し出しも覚悟したが、上田は臆せずに腕を振り続けた。雨の中、まるで自分自身の力を試すかのように。2球ファウルのあと8球目のスライダーを引っかけさせてピンチ脱出。最後まで集中力を切らさず、攻めに徹した投球は見事だった。

 ここで冒頭の問いかけに戻る。

--いい投手とは何ぞや?

 答えは決まっている。「フルカウントからストライクを投げられる投手のこと」だ。

「昂弥ー‼︎ はやくきてくれーっ‼︎‼︎」

 ヨーイドンからの2失点で始まった上田のプロ人生。責任投球回を投げ切って3失点という結果は、十分に評価されるべきだろう。

 だからこそ、欲を言えば勝たせてあげたかった。打線はヤクルトを上回る8安打を打ちながら1点どまり。このカードは1戦目が7安打1点、2戦目が10安打2点と昨季までの「各駅停車打線」を彷彿するような貧打沼にはまっているが、チーム編成さえ困難な状況を思えば高望みすまい。これが今のベターな打線であり、精一杯の結果なのだ。

 それにしても、である。安打は打つが、点には結びつかない。つくづく長打の重要性を思い知らされる一方で、石川昂弥の穴がこれほど大きいとは、まさに失って気付くその存在感。もし石川がいたら、少なくともこの3連戦のどれか一つはもう少し楽な展開になっていただろうに。

 場合によっちゃ今夜だって、石川の一発で上田に白星をプレゼント……なんてのは誇大妄想が過ぎるか。とにかく今、心をクリリンにして叫びたいのはこの一言。

「昂弥ー‼︎‼︎ はやくきてくれーっ‼︎‼︎」

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter

【参考資料】

【ドラゴンズ公式】#上田洸太朗 選手へ支配下登録を伝える監督室にカメラが潜入!同学年 #髙橋宏斗 選手が教えてくれた素顔とは? #Dragons_Inside - YouTube