ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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アベック記念日~昂弥&鵜飼競演も空砲に終わる

●3-4阪神(8回戦:バンテリンドーム)

 6回終わって1点リード。手中にしたかに思われた勝利は、するすると逃げていった。先週131球という今時めずらしい球数で物議をかもした柳裕也だが、この無尽蔵のスタミナが首脳陣の判断を誤らせた。

 制球力に定評のある柳が、今日は序盤から球審との相性が合わずに苦労した。決まったかに思われたコースがことごとくボールと判定され、球数はどんどん嵩んでいった。それでも屈しないのが昨季二冠の凄みである。

 のべ7度のスリーボールも集中力を保ち、無四球で終えたのは驚異的だ。球審の辛い判定にもめげずに際どいコースに投げ続け、奪った三振は10個。並の投手ならもっと早い段階で崩れていてもおかしくない。エースが「我慢」の投球をしているならば、応えてやるのがチームメイトというものだ。

 5回裏に鵜飼航丞の3号逆転本塁打が飛び出すと、6回裏には石川昂弥が特大の5号ソロでリードを広げる。バンテリンドームの広さをものともしない若手コンビのアベック競演は、ゴールデンウィークのラストを締めくくるにふさわしく「未来」を感じさせてくれた。さあ、あとは気持ちよく必勝リレーを見届けるだけだ。

 ところが、ここから試合は暗転する。7回表のマウンドには柳。前の回で既に100球を超えていたが、イニングを食うことに使命を抱く背番号17は今日もまた続投を選択した。

 盤石の内容だったなら文句はない。基本的に私自身も立浪監督と同じく「昔の投手」が好きな人間である。球数なんか気にせず、投げられるところまで投げる。時代錯誤と言われようと、そんな投手にロマンを感じるのは否めない。

 ただ、今日の柳は少なくとも “盤石” とは言い難かった。球審とのズレ、既にピンチを二度背負ったこと(2回表、3回表)、そして先週の131球熱投による疲れ……。連休を作れる日曜日にリリーフ陣を温存する意図は分かるが、果たして今日の柳に続投させる必然性はあったのだろうか。

 同点に追いつかれた7回表、大山悠輔の一発で交代するかと思いきや、イニングの終わりまで投げさせたことにも疑問符がついた。結局今日も119球である。自他共に認める「投げたがり」の柳の意向を尊重すると言ったら聞こえはいいが、その結果続投が裏目に出るのでは本末転倒だ。

 交代すべきところでは交代する。昔を彷彿させる「ロマン」に陶酔するよりも、勝利のための現実的な運用を首脳陣には求めたい。

選ばれしスラッガーの競演に際してのみ使用される特別の言葉

 それにしても勝ちたかった。お立ち台で柳、鵜飼、石川のスリーショットが見たかった。「アベック」なんて20年前には死語と化していた言葉を未だに使うのは、世界広しといえども野球界くらいのものだろう。ところでドラゴンズにおいて「アベックホームラン」というフレーズが躍るのは、一体いつ以来だろうか。大豊泰昭と山﨑武司、福留孝介とタイロン・ウッズ……。

 単に二人の打者が打つのではなく、選ばれしスラッガーの競演に際してのみ使用される特別な言葉。今でいえば山田哲人、村上宗隆(ヤクルト)、坂本勇人、岡本和真(巨人)がこれに該当しそうだ。長らくスラッガー育成に苦心していたドラゴンズでは久しく聞くことはなかったが、石川&鵜飼なら「令和アベック」と呼ぶのに違和感はない。

 なによりもこの二人に本塁打が出ると球場は大歓声に沸き、SNSではたちまちトレンド入りする。それだけファンの期待も大きく、スターの素質のある二人だ。今日は空砲に終わったが、新しい時代の息吹に触れた今日は『アベック記念日』と呼びたい。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter