ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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窮地のナイスガイ~指揮官も頭を痛める「ビシエド問題」

●2-10DeNA(6回戦:横浜スタジアム)

 見せ場らしい見せ場もなく投手陣が炎上。ダメ押しとなる1イニング3ホーマーを食らった頃には悔しさを通り越して乾いた笑いしか出なくなっていた。

 今季も開幕して一か月以上が経ち、色々な勝ち方、負け方を経験してきた。その中でも私は今日の惨敗をこそ “ワースト” に推したいと思う。

 開幕前日の3月25日、株式会社ビープラウド主催のトークイベント「Baseball Play Study mini〜中日ドラゴンズを語ろう」に出演させてもらった際、私は今季の投打のキーマンとして森博人ビシエドの名前を挙げていたのである。

 森博人については「炎上しない安定感で勝ちパターン入りも全然あり得ますよ」なんてポジティブに予言しておきながら、残念ながら本来の投球は影を潜めている。牧秀悟やソトに打たれたならともかく、伏兵の3人に好き放題やられたのは印象も悪く、おそらく明日からは二軍で鍛え直しになるだろう。

 ただ実績のない森とは違い、本当の意味で深刻なのはビシエドの方である。ここまで全試合「4番ファースト」でスタメン出場。まさしく文字通りの「不動の4番」であるわけだが、肝心の成績はといえばとてもじゃないが4番とは思えないような寂しい数字が並ぶ。

「そのうち調子が上がるさ」と我慢するにしても、既に100打席を優に超えているのだ。仮にこれが3億円で獲得した新外国人なら、ファンの我慢はとっくに限界を超え、首脳陣も重い腰を上げる頃だろう。そうならないのはビシエドが4年前の首位打者であり、また7年かけて築き上げた確固たる信頼関係によるところが大きいからだ。

 ここ2年ほどビシエドの短評は「ナイスガイ」とか「名古屋愛」のような人柄がフォーカスされることがほとんどで、3年11億(推定)という破格の条件で契約更新に至った背景にも少なからず人間性の評価が加味された面はあるのだろう。

 だが一方で、本来助っ人に期待されるスラッガーとしての魅力はジリ貧傾向にあり、もう少し厳しい目でジャッジしたいのが本音ながら、人柄を知っているだけについ甘くなってしまう……という不健全な関係性に陥っているのは確かだ。

 だからこそ今日の試合後の立浪監督のコメントには心底驚かされたし、共感せざるを得なかった。タンケ、この成績じゃ擁護するにもそろそろ無理があるよと頭を抱えていたタイミングで、まさか監督が誰よりも先に口を開くとは。さすが立浪と言うべきか、恐るべし立浪と言うべきか。

2016年から続いた「4番ビシエド」時代、終焉も?

「ちょっといろいろ考えます。明日、本人とも話をして。ちょっと前にも打てない時に『1カ月このスタイルでやってみよう』と言っていたが、1日、2日ですぐ自分のフォームに戻すんで。頭が痛いですわ」日刊スポーツ

 試合の分岐点となった初回の攻防。同じ1死一、二塁という場面で3ランを放ったDeNAの主砲・牧に対し、ビシエドはポップフライに倒れた。その差はあまりにも大きく、試合全体の流れさえ左右してしまうのが4番の重責たる所以だ。

 開幕以降、一貫して立浪監督はビシエドへの物足りなさを口にしてきた。だがここまではっきりと「4番外し」を示唆するのは初めてのこと。そればかりか、真面目で評判のビシエドの練習への取り組み方そのものに言及したのは歴代指揮官でもこの立浪が初めてだろう。

 これまで称賛されることはあっても問題視されることは決して無かったビシエドの素行面。そこに敢えて言及したのは、復調への期待がそれだけ大きいからに他ならない。ただ一方で、ある種タブーとなっていた “ビシエド批判” を公然と口にした意味は重い。昨日の京田陽太の処遇にしてもそうだが、やると決めたら聖域を取っ払うのが立浪流だ。

 指揮官に「頭が痛い」とまで言わせたビシエド問題。前のめりに突っ込む悪癖を今後も矯正できない、する気がないと思わせてしまった時には、2016年から続いた「4番ビシエド」時代が終焉を迎えることになるのかもしれない。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter