ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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取れる時に点を取る〜最適解だった岡林勇希のスクイズ

○7-3DeNA(4回戦:横浜スタジアム)

 ビジターでの僅差リードは無いものと思え。というのは誰かの格言ではなく、暗黒時代を通してファンが学んだ経験則である。特に屋外球場ではゲームセットの瞬間まで油断は禁物。10点差をひっくり返されたトラウマは今もなおファン心理に暗い影を落としている。

 さて、今日の試合はドラゴンズにとって “苦手” が幾重にも重なり、戦前から苦戦が予想されていた。相手先発のロメロは昨年から4連敗、3月29日には8回零封を食らうなど天敵といえる存在だ。またデーゲームは昨季勝率.357、さらにカード初戦は目下5連敗中と、負ける要素は盛りだくさん。勝ち筋を見つける方が難しいなかで、一挙3得点をあげて逆転に成功したのが3回表のことだった。

 ただ、同点に追いつき、なおも無死満塁という局面で1点しか追加点を得られなかったことが、案の定その後の展開に響いてきてしまう。ビジター勝利の鉄則は「取れる時にできるだけ点を取る」ことに尽きる。その点において3回表の攻撃は、逆転した喜びよりももうひと押しできなかった消化不良感が残ってしまった。

 バンテリンドームならいざ知らず、ここは超打高スタジアムのハマスタである。何が起こっても変じゃない、そんな球場さ覚悟はできてる。

 5回表に高橋周平のタイムリーで加点するも、6回裏に再び1点差に詰め寄られる。残り3イニング。鉄壁の投手リレーを誇るドラゴンズとて、ハマスタでの1点差は決して安心できるリードではない。終盤を迎え、試合の行方は「次の1点をどちらが取るか」に絞られたといっても過言ではない。

 7回表、4番からの好打順を三者凡退に抑えられた時点で流れは明らかにDeNA側が掴んでいたし、悪夢の逆転負けが脳裏をかすめたのは私だけではないだろう。だが今年のドラゴンズはそう簡単には転ばない。底力を実感した8回表の3得点、特にDeNAを戦意喪失させた6点目のスクイズは立浪ドラゴンズの逞(たくま)しさを象徴するかのような一撃だった。

状況に応じて最適解を導き出し、実行に移す「野球脳」

 1死一、二塁から加藤翔平の当たりそこないのピッチャーゴロが悪送球を招き、喉から手が出るほど欲しかった「次の1点」が転がり込んできた。なおも二、三塁で打席には岡林勇希。もしここで無得点に終わると、ピンチを脱したDeNAには再び反撃に転ずる余地を与えることになる。

 先ほど「次の1点をどちらが取るかが重要」と書いたばかりだが、8回裏が牧秀悟、ソトから始まる以上は最低2点は取っておきたいところだ。ここでベンチは三塁の代走に髙松渡を送り、お膳立てを済ませた。ここからはバッテリーとの駆け引きだ。

 2球目にバントの構えをみせてスクイズを意識させたものの、3球は甘い球を見逃してカウント1-2。今日2安打と当たっている岡林に果たしてスクイズさせるのか、それとも……。

 岡林がバットを寝かせたのは4球目、田中健二朗のリリース寸前のことだった。一塁線ややマウンド寄りに転がす見事な打球を田中自らが慌てて捕球するも、サウスポーが一塁側のバントを処理してホームで刺すのは無理がある。それもランナーは髙松である。猛烈なスピードで頭からホームに突っ込み、決定的な6点目を奪取。記録が野選というのも、相手にダメージを食らわせるには効果的だった。

「あと一本」が遠く、犠飛でもいい場面で三振や内野フライを量産していた頃が懐かしい。今年のドラゴンズは状況に応じて最適解を導き出し、実行に移す「野球脳」がチーム全体で高まっているように思える。

 総戦力は大したことなくても適材適所が躍動する様は、まるで2004年のドラゴンズを見ているかのようだ。あの年の最終順位は言うまでもなかろう。これで貯金2。遠い遠い夢物語だが、あるいはーー。いやいや、まだ気が早すぎるか。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter