ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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「理想の三振」を狙いすぎ? 高橋宏斗に足りない「雑さ」と「余裕」

●0-1広島(6回戦:バンテリンドーム)

 立浪ドラゴンズの熱いゲームを期待した大勢のファンで賑わうゴールデンウィーク初日の本拠地。しかし待っていたのは淡々と、黙々と凡打を重ねる「ダメなときのドラゴンズ」だった。

 試合前には大島洋平の登録抹消という、聞きたくない悲報も届いた。昨日抹消せずに様子を見たことから安堵したのも束の間、軽傷という当初の見立ては叶わぬ願望に終わった。目下首位打者の離脱はあまりにも痛い。ここまで中日が5割をキープしているのは、言うまでもなく大島の好調によるところが大きい。

 その大島が最低10日間はチームを抜ける。それも6連戦が続くこの大事な時期に、である。「Addict to 大島」状態の中日にとっては最悪のタイミングだ。高橋周平を見切り発車のように昇格したのも、左打者の枚数を揃える意図があってのことだろう。

 しかし、苦肉の策で組んだ新オーダーを試すには相手が悪かった。マウンドに仁王立ちするのは大瀬良大地。3番・高橋の3打席連続ポップフライが象徴するように、今日の大瀬良は支配的な投球というよりは、テンポ良く凡打の山を築く “うまい投球” が光った。結果、散発2安打で完封負け。二塁さえ踏めない惨状では「誰々が悪い」という問題でもなかろう。

 5回以降は1点を追いかける展開となったが、失礼ながら点が入る雰囲気はまったくと言っていいほど感じなかった。甲子園から続く貧打の流れ。打線は水物とは言うが、大島不在のこの状況で負の周期が来てしまったのは厄介だ。

 明日の相手先発は森下暢仁。前回対戦で派手に燃やした分、さぞかし雪辱を期して臨んでくるに違いない。泣きっ面に森下はキツすぎるが、これ以上借金を増やすのは何としても避けたいところ。踏ん張りどころを迎えた立浪監督の采配に注目したい。

理想の三振を狙いすぎてはいないだろうか?

 剛柔織り交ぜた大人の投球でドラゴンズ打線を翻弄した大瀬良に対し、ほとばしる若さでもって鯉打線に真っ向勝負を挑んだのが高橋宏斗である。

 5回4安打1失点、奪三振は8を数えた。十分すぎるほど立派な数字にも見えるが、これで110球はあまりにも多すぎる。ただ、高橋は決して制球が悪くて球数を要しているのではなく、むしろ常にストライク先行のカウントを作れる投手だ。

 現に今日も対戦したのべ21人のうち15人に対して2ストライクと追い込んでおり、そのうち3ボールとしたのは2人だけ。投手有利なカウントで打者を追い込みながら、いたずらに球数が嵩むのは高橋の最大の課題といえよう。

 この手のタイプは決め球に窮するケースがよくあるが、高橋はこれに該当しないように思う。何しろ常時150キロ超マークの威力ある直球に加え、狙って空振りが取れるスプリット、さらにカットボール、カーブと球種の豊富さはチーム随一を誇る。フィールディングもうまく、つくづく器用な投手だ。

 だが、むしろ器用であるがゆえに「理想の三振」を狙いすぎてはいないだろうか。コースびたびたに投げた球がわずかに外れてボール判定となったり、露骨な三振狙いの球をカットされる場面が目立つ。

 確かに三振は「ピッチングの華」ではあるが、ポップフライも三振も同じアウトだ。丁寧、丁寧、丁寧に投げることに神経を費やし、結果的に長いイニングを投げられないのでは勿体ない。

 毎イニングのように汗びっしょりになりながらピンチを脱する高橋を見ていると、言い方は悪いが、もう少し「雑」に投げる余裕が欲しくなる。

 一方で大瀬良は4三振と派手さはないものの、早いカウントでテンポ良く打たせて取る投球にはベテランの味が詰まっていた。投球の迫力でいえば高橋に軍配が上がるかも知れないが、先発投手の仕事はできるだけ長いイニングを投げること、そして勝つことだ。

 とはいえ、まだプロ4試合目である。閃光のごときティーンエイジャーに老練の投球を求めるのは野暮というもの。今はまだアウト1個に全力を尽くすスタイルで問題なかろう。ただ、どこかで壁にぶつかった時、今日の大瀬良のような投球を「引き出し」として持っておくのは悪いことじゃない。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter