ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

MENU

世界の鈴木誠也超え?シーズン24本ペース・石川昂弥の可能性

●2-3阪神(5回戦:阪神甲子園球場)

 あっとう言う間の出来事だった。打者6人に対して投げた球数は9球。本塁打や長打が出たわけではなく、ほとんど内野の中だけで3点を奪われた。3連打での失点もさることながら、スクイズ、犠打、野選での2失点は悪い夢でも見ているかのようだった。

 先制したのはドラゴンズだった。2回表、石川昂弥がレフトスタンドへの最前列にアーチを駆けた。昨日の嫌な流れを払拭するかのような豪快な一発。先発が大野雄大であることからも、本来ならこの一発で勝利をモノにしなければいけなかったのだが……。

 不思議だったのは、この2日間どれだけチャンスを作ろうがまったく点が入る気がしなかったことだ。「甲子園の魔物」と言うのか、なんというのか。終始劣勢ムードの中、ここぞのピンチで致命的なミスを犯し、ここぞのチャンスでは一本が出ない。昨日のエラーを受けてスタメン出場した堂上直倫が、肝心の場面で機能しないのもツイていなかった。

 もっとも今日はチャンスらしいチャンスも少なかったが、9回表の無死二塁からの無得点はさすがに萎えた。中日戦では長らく無双を誇る岩崎優を打ち崩すにはこれ以上ないチャンス。1死三塁まで追い詰めたものの、三塁からホームベースまでのわずか27.431mがあまりにも遠すぎた。木下拓哉、石川が連続見逃し三振では打つ手なし。

 結局大野も4回を除けば危なげなく8イニングを一人で投げ切ってしまっただけに、野手陣のちぐはぐが余計に目立つ格好となった。

鈴木誠也をも凌ぐ高卒3年目のシーズン24本塁打ペース

 石川と甲子園。思い出すのは3年前の春、東邦高3年時のセンバツ高校野球決勝だ。この試合での本塁打が、半年後のドラフト会議での3球団競合に結びついたのは言うまでもない。当時の与田監督が強運の右腕で引き当てた金の卵は、ファンが期待していた以上の超スピードで日々成長を遂げている。

 今日でドラゴンズは24試合目。ちょうどシーズンの6分の1を消化したことになる。このペースでいけば石川の年間本塁打は24本。本人が目標とする20本を超える計算になる。神宮球場での2発は球場の狭さが手伝った感もあったが、バンテリン、甲子園というバッター泣かせの球場での3,4号は文句の付けようもない。

 進境著しい20歳の若竜。オープン戦では不安を露呈した守備面も27日終了時点でUZR3.9(DELTA調べ)と思わぬ健闘をみせており、たとえこの後高橋周平が一軍復帰してもサードのレギュラーの座は当分奪われそうになさそうだ。

 ただ、魅力的な一発がある一方で、信じられないくらい脆い打席があるのも確かだ。昨日の3三振もそうだし、今日の最終打席での三振もあっけなかった。三振を恐れる必要はないが、もう少しファウルで粘るなり工夫できると投手も簡単には勝負できなくなり、より一層成績も上がってくるはずだ。

 ここまでは100点満点以上を叩き出しているが、ここからは期待値に比例して求められるハードルの高さも上がってくるだろう。チームは12勝12敗で五分に逆戻り。ミスが目立つなど徐々に綻びが見えてきた。こんなとき、昨季までならズルズルと沈む一方だったのかも知れないが、今年は石川がいる。一発で雰囲気を変えることのできる存在は、球界広しといえどもそう多くはない。間違いなく石川はその一人であろう。

 海の向こうでは師匠・鈴木誠也が快進撃を続けている。ボール球を振らない選球眼と、振ったときに仕留める確実性。いずれも今の石川に足りていない部分だ。その鈴木のプロ3年目は97試合5本塁打と頭角をあらわしたシーズンだった。

 今やMLBを席巻する大打者になった鈴木を超えるペースで成長する石川昂弥。何度も言うが、今年のドラゴンズは負けてもこれがあるから楽しめる。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter