ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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アリエルの勇気が呼び込んだ!ミラクル大逆転G倒!

〇7-6巨人(6回戦:バンテリンドーム)

 3回表、ウォーカーの打球がライトスタンドに着弾した瞬間、二つの言葉が頭をかすめた。「ダメ押し」「終戦」。序盤で1-6というスコアを目の当たりにして「絶対勝つぞ! ドラゴンズ!」と思えるほど私のメンタルは強くなかった。

 今年の巨人は強い。何しろ打線に穴がなく、小林誠司にまで打たれてしまったら抗(あらが)う手立ては無いに等しい。圧倒的な戦力差をまざまざと見せつけられ、呆然と過ごす日曜午後。だが、どんなに強いチームにだって全く隙がないという事はないのだ。

 例えば球団史上最強と謳われる2006年のドラゴンズには、タイロン・ウッズの一塁守備という分かりやすい弱点があった。またV9時代の巨人でさえもONに続く5番打者の固定には苦労し、中日の主砲・江藤慎一の獲得に本気で乗り出したこともあるほどだ。

 では今季の巨人の穴はどこか? それが分かりやすく可視化されたのは、ビハインドを5点に広げられた直後の3回裏のことだった。きっかけはこの回先頭のアリエルだ。低めの変化球をすくうようなバッティングでレフト前へ落とすと、なんとアリエルが悠然と二塁ベースを陥れたのだ。言うまでもなくアリエルは俊足ではない。いったい何が起きたのか理解できなかったが、リプレイを見て納得した。そして驚いた。

 レフトを守るウォーカーが打球をグラブに収めたその瞬間、まだアリエルは一塁ベースを踏んでさえいなかった。しかし、アリエルは躊躇うことなく二塁へと向かった。まともに考えればあきらかな暴走だが、返球は戻ってこなかった。無理もない。ウォーカーの肩の弱さは噂以上のもので、ずいぶんと後方で構えるカットマンへの返球ですらワンバンになる有様だったのだ。

 あれだけ迷わず走れたのは、よほどミーティングで方針が徹底されていたに違いない。ただ、万一にもアウトになれば反撃の機運が一気にしぼむ危険性もはらんだ、見た目以上にギャンブル的な判断だったのは否めない。

 それでも回した荒木コーチ、そして巨体を揺らし、膝を泥だらけにしながら全力疾走したアリエルの勇気こそが、その後の猛攻を呼び込んだのである。

バンテリンドームの広大な外野ではごまかしも効かなかった

 続く4回裏もチャンス拡大のきっかけはウォーカーの緩慢な守備を突いたものだった。しかもチーム随一の鈍足・木下拓哉がレフト前ヒットで悠々と二塁に到達できるのだから、解説席の川上憲伸氏が「チームのリズムが悪くなる守備」と苦言を呈するのも無理はなかった。

 さらに二、三塁として石川昂弥の初球打ちは浅いライトフライとなったが、三塁走者のビシエドは本塁へ突進。これも通常であればスタートを自重する当たりだが、ポランコの返球が逸れる間に楽々ホーム生還を果たした。

 ウォーカーとポランコ。打つ方では脅威の破壊力を誇る両助っ人も、守る方ではあきらかな「穴」といえる存在のようだ。5点差を付けたところでどちらかを交代していれば、おそらくドラゴンズの勝利はなかっただろう。ただ、まだイニングが浅かったことを考えればさすがの策士・原監督も動けなかったのは当然か。

 野球は点取りゲームであるのと同時に、いかに点を防ぐかのスポーツでもある。あれだけの大きな穴があれば東京ドームならいざ知らず、バンテリンドームの広大な外野ではごまかしも効かなかったわけだ。

 地の利を生かした攻撃で、今やお家芸になりつつある大逆転を決めたミラクル・ドラゴンズ。首位・巨人との3連戦を1勝2敗に留めたのは非常に大きい。大事なのは3タテを食らわないことだ。つくづく激走をみせたアリエルには感謝したい。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter