ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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お前が打たねば誰が打つ!深刻化するビシエドの不振

●0-3巨人(5回戦:バンテリンドーム)

 二度ある事は三度ある、ではないが。完全試合の快挙が28年ぶりに塗り替えられたかと思ったら、すぐ一週間後に同じ投手が「あわや」の快投。さらにその一週間後、今度は別の投手が大記録達成なんて事になったら、2022年4月は完全試合の特異月として永久にプロ野球史に刻まれたことだろう。

 でも正直、マジでやられると覚悟したのは私だけではなかろう。なんたって7回2死まで淡々と抑え込まれ、残るは2イニング7アウトのみ。ノリノリで投げるシューメーカーには疲れの気配は一切なく、むしろ大記録に向かってアドレナリンがみなぎっているようにさえ感じた。

 ドラゴンズの被パーフェクトは歴史上、二度しかない。そのうちの一つが1957年、国鉄の金田正一に喫したものだ。舞台は真夏のナゴヤ球場。杉下茂との壮絶な投げ合いの末、9回表に1点を奪った国鉄がそのまま1-0で勝利した。2年前には同じ金田との投げ合いで、杉下がやはり1-0でノーヒットノーランを達成したことがあったが、まさに金田が “倍返し” した格好だ。

 ただ、このときの完全試合は別の側面でもよく知られている。事件が起きたのは9回裏のことだった。パーフェクトまであと3人。先頭の酒井敏明はカウント1-2からの4球目をハーフスイング気味に見送ったが、球審はこれをスイングとして三振を宣告した。すかさず天知監督がベンチを飛び出して猛抗議。さらにスタンドから興奮した中日ファンが次々とグラウンドに降り、収拾のつかない事態となってしまったのである。

 結局45分間の中断を経て試合再開。金田は残る2アウトを連続三振で奪い、みごとに大記録を達成した。なんでも観客の蛮行を受けて「残り2人は文句のない三振に取ったる」と逆に闘志を燃やしたというから、おそるべしカネやんである。

 大記録に水を差すようなファンの行動は断じて擁護できないが、本拠地での屈辱だけは何としても阻止してみせるという当時のファンの熱意だけは伝わってくる。もっともこの時代は良くも悪くもグラウンドとの距離感が近かったため、たびたびグラウンド乱入騒動が発生していたのではあるが……。

ドン底に沈む4番打者の復活なくしてチームの浮上なし

 カレンダーを65年分めくり、話を今日に戻そう。ファンのマナーも劇的に改善した現代野球。あと7アウトでパーフェクト達成という窮地を迎えても、乱入など考えるファンはいるはずもない。ただ、両手を合わせて祈るのみ。それが令和の観戦スタイルだ。

 待望の一本は、アリエルのバットから放たれた。痛烈な打球がフェアゾーンぎりぎりで弾むと、スタンドからはまるで点が入ったような歓声がわき起こった。真ん中付近に抜けたスプリットを逃さず、初球から強振したアリエルの積極性に救われた。もし負けても、これで単なる「よくある完封負け」で済む。あわや歴史的敗戦を喫する瀬戸際だったのだ。たった一本だが、その差はあまりにも大きい。

 しかもこの時点でまだ1点差。ビシエドに同点タイムリーないし逆転弾でも飛び出していたら、たちまち最高の展開になっていただけに、凡退が口惜しい。得点圏打率1割未満というドン底に沈む4番打者の復活なくしてチーム浮上なし。立浪監督は「彼しかいない」とあくまで復調を待つ姿勢を強調するが、ここまでチャンスに弱いようだと再考も視野に入れざるを得ないだろう。

 今季本塁打「40本」を目標にするビシエドだが、現在まだ2本。それ以上に深刻なのが6打点という数字だ。阿部ちゃんが打ちまくっていた時期はごまかせていたが、やはり打線の核は4番。そこが機能しない限り、今日のようなロースコアの負け試合が増えるのは避けられそうもない。

 パーフェクトを防げたのはよかったが、細かいミスが命取りにもなったこの試合。ただ、どのみち0点では勝てるはずもなく。シューメーカーに打たれた松葉貴大も、ここぞでミスの出た桂依央利も反省の余地はあるが、やはり憂慮すべきはビシエド。お前が打たねば誰が打つ、である。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter

【参考資料】

プロ野球史上もっとも荒れた完全試合【1957年8月21日】 | 野球コラム - 週刊ベースボールONLINE