ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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球種のデパート・高橋宏斗はバッティングもいい!

〇4-1ヤクルト(5回戦:バンテリンドーム)

 小川泰弘といえばバンテリンドームに滅法強いことで知られる。愛知・田原市出身。昨季は100球未満での完封を意味する「マダックス」をこの球場で記録した。今シーズンはここまで不甲斐ない内容が続いているが、得意のナゴヤで息を吹き返す恐れは十分あり得る。

 そんなわけで昨日の一戦は大野雄大でなんとしても取りたかったのだが、結果は言わずもがな。本拠地2連戦を連敗で終えるか、五分に戻せるかは19歳の右腕に託されることになった。

 高橋宏斗にとってヤクルトは、前回登板でプロ初勝利を飾った相手である。休養を兼ねた「投げ抹消」を経て約二週間ぶりのマウンド。球筋も、どんなタイプの投手であるかも燕打線は当然熟知しており、研究も重ねたことだろう。

 同じ相手に二度続けてやられるほど日本一チームは甘くない。正直、厳しい戦いになるかなと覚悟していたが、幸いにも予想は当たらなかった。

 初回、先頭の太田賢吾との対戦からして高橋はノリに乗っていた。ストレートとスプリットを交互に投げて4球で空振り三振を奪うと、続く青木宣親の初球には110キロ台のナックルカーブを投じ、ストレートを一球挟んでからカットボールでゴロに仕留めた。ここまで7球で早くも4球種を見せたことになる。立ち上がりから “球種のデパート” っぷりを存分に見せつけて強力打線を手玉に取った。

 かと思えば3番・山田哲人には3球目にスプリットを挟んだだけで、あとはストレートのゴリ押しで打ち取ってしまうのだ。まるで勝負を楽しんでいるかのような、余裕のある配球。木下拓哉のリードに依るところも当然大きいのだろうが、逃げずにガンガンと攻めていける高橋の度胸もやはり並外れたものがある。

 細かい制球にはまだ課題があり、どうしても球数が増えてしまうのは今後の改善点だろう。この日もスリーボールとしたのが実に5回。前回に続いて6イニングでマウンドを降りる結果となった。それだけ慎重に投げているのだと思うが、6回で100球を超えているようだと完投・完封は夢のまた夢。次回はもう少し省エネ投球で最低7回は投げ切ることを期待したい。

 こうやってハードルをどんどん上げていけるのも、高橋がそれだけ結果を残しているからこそ。「今季中にプロ初勝利を」なんて言っていたのがウソみたいな急成長には目を見張るばかりだ。

「バッティングもいい」はエースの条件

 ところで “球種のデパート” という表現もそろそろ通用しなくなるのだろうか。全国で相次ぐデパートの閉店ラッシュ。多種多彩な商品が揃うという意味合いでの “デパート” は、もはや若い世代には伝わりにくいのかもしれない。時代は移り変わる。されど、変わらないものもある。そのひとつが「バッティングもいい」というエースになるための条件だ。

 4回裏、貴重な3点目の突破口を開いたのは9番・高橋の二塁打だった。狙いすましたかのように高めの真っすぐを打ち返すと、打球は前進守備の頭を超えてフェンスに到達。打った高橋は悠々と二塁を陥れた。今季、投手のバッティングが飛躍的に向上しているドラゴンズだが、中でもこの当たりは勝野昌慶の本塁打に次ぐ会心の一打であろう。逆方向に強引に持っていくスイングは、かの川上憲伸を彷彿させるものがあった。

 ドラゴンズのエースは伝統的にバッティングに長けた選手が多い。ただ、近ごろは吉見一起、大野雄大と打つ方では控えめなエースが続いている。そこにきて打っては4割、投げては強気の勝負で8奪三振の高橋は、正統的な竜のエースの系譜に連なると言えそうだ。

 既にエースと呼ばれることも多い柳裕也は、「今季は10安打打ちたい」とバッティングに対して並々ならぬ情熱を燃やしている。高橋は既に2安打。果たして勝つのはどちらか? 密かな見どころとして注目していきたい。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter