ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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抜けなかったライナー2連発〜ピンチを救った石川昂弥の好捕

〇10-4広島(5回戦:MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島)

 野球とは不思議なもので、互いに「0」を延々と並べる試合もあれば、面白いほどの打ち合いになる試合もある。とくに初回に幸先よく複数得点を記録した試合というのは、得てして後々キツい展開になるものである。

 森下暢仁と福谷浩司。このマッチアップからして予想されたのは僅差の投手戦。しかしプレイボールから15分で、試合は思いもよらぬ方向に動くことになる。スコアボードに刻まれた「4」の数字。一挙6安打を集中したドラゴンズが、防御率1点台の森下を早々に打ち崩した。

 休日のマツダスタジアムに集まった大勢の広島ファンは、おそらく初めて目にするであろう若きエースの大炎上を唖然としながら見つめていたことだろう。無理もない。中日ファンだって何が起きているのか理解するのに時間を要したのだから。

 ただ、この時点で「今日は、ドラゴンズ大丈夫だね」と言い切ってしまうのが尚早であることは、訓練されたファンであればよく分かっていたはずだ。3月27日、柳裕也が初回に4失点を喫した巨人戦、結果的に試合を制したのはドラゴンズだった。じわじわと追い上げ、終盤に追いつき、追い越した立浪ドラゴンズの記念すべき初勝利。あの試合の決め手は、続投した柳が7回まで巨人の追加点を1点に留めたことだった。

 したがって初回の4得点は決して勝利を確定させるものではない。今度は逆の立場にならないように、何としても早い段階で追加点を奪い、広島サイドを戦意喪失させる必要がある。そうした中で飛び出した鵜飼航丞の本塁打。やや疲れ気味の岡林勇希に代わり、2番ライトで先発出場したルーキーの頼もしい一発は、立ち直りを図る森下を意気消沈させるには十分だった。

 ヒーローインタビューに呼ばれたのは先制打のビシエドだったが、今日のターニングポイントはこの鵜飼の本塁打だったと思う。これが無ければ、直後の更なる猛攻もあったかどうか。まさしく試合を決定づける大きな一発になった。

石川のグラブへと吸い込まれていったライナー2連発

 だが、これでワンサイドに持ち込めるほど首位広島との戦いは甘くなかった。ましてや満員のマツダである。わずかでも隙をみせれば激流のごとく攻め込まれる恐れあり。8-0というスコアでも安心できないのは、過去幾度も味わったトラウマが脳裏をよぎるからであろう。

 4,5回に福谷が計3点を失い、中盤を終えて8-3と決して楽勝とはいえない点差に詰め寄られていた。迎えた最大のピンチは7回裏だ。マウンドには清水達也。最近5登板で打たれた安打は1本のみと安定感のある投手だが、今日は登場するなり連打を食らい、いきなり無死一、二塁のピンチを招く。

 さらに1死から連続四球を許し、押し出しという嫌らしい形で失点を喫した。じりじりと詰め寄る赤ヘルの恐怖。4点差となり、なおも満塁。ここで一本出れば間違いなく流れは大きく広島に傾くことになる。しかし、今日に関してはツキを持っていたのはドラゴンズだった。

 7番・大盛穂の打球は一瞬ヒヤリとしたものの、サード・石川昂弥がガッチリと掴んでツーアウト。そして投手をロドリゲスにスイッチした、その初球。代打・田中広輔の放った痛烈な当たりをまたしても石川がジャンプ一番、好捕して最大のピンチを凌いだのである。

 あらかじめ決まっていたかのように、石川のグラブへと吸い込まれていったライナー2連発。もし1メートル左に逸れてたら、あるいは1メートル高く飛んでいたら打球は外野へと抜け、試合もまったく違った展開になっていただろう。

 いい守備が出るのは、それだけ気力が充実している証拠でもある。昨日は4タコに倒れたが、今日は2安打(3出塁)2打点の活躍。「バット寝かせる構え つかん打」との見出しで中日スポーツの一面を飾った当日に、再びバットを立てるフォームに戻すという親会社泣かせのムーブを見せたお茶目な20歳だが、形はどうあれ今は結果こそが何よりの自信になるはずだ。

 今日のマルチ安打で打率.246と、いつのまにか木下拓哉、ビシエドよりも高い数字にまで上昇してきた。開幕前には不安視されたサード守備も、ここまでは想像以上によく守れていると思う。

 もちろんまだまだ発展途上。いろいろな事を試しながら、時にはつまづき、成長していくのだろう。そんな姿を日々見守れるのはファンの特権。攻守ともに「石川鑑賞」が楽しいシーズンである。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter