ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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ほろ苦バースデー~岡野祐一郎が負けたのは、打者ではなく……

●2-3広島(4回戦:MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島)

 直近3カードで8勝1敗と波に乗る立浪ドラゴンズ。対するは、今月初頭にスイープを食らわせた広島である。コロナ禍の入場制限のあった過去2年とは違い、3年ぶりとなる真っ赤に染まったマツダのスタンドが自信を与えるのか、下馬評を覆して広島は現在首位を走っている。

 久々の満員のマツダで、果たして中日は好調をキープすることができるのか。最低でも1勝はしておきたいこの2連戦。マウンドには今季初先発の岡野祐一郎が上った。

 先発の順番待ち渋滞が発生するほど人材豊富の竜投。「自分もその流れに乗れるように。ストライク先行で攻めたい」(中日スポーツ)と意気込みを語った岡野にとっても、待ちに待った初マウンドだ。

 オープン戦では2試合8イニングに投げて防御率1.13、WHIP0.75と結果を残した。並のチームであれば間違いなく開幕ローテに食い込めたはずだが、ライバルひしめき合うドラゴンズにおいては「即・合格」とはならなかった。開幕16試合目。岡野にとっての「開幕」は、奇しくも28歳のバースデー登板にもなった。

ピンチで顔をのぞかせた「悪い癖」

 初回はピンチを背負いながらも後続を断ち切ると、2回表には満塁から自身のバットで先制打点を叩き出した。プロ初安打初打点。難敵・大瀬良大地から奪った2点は、試合の流れ的にも大きな意味を持つ。岡野もこれで乗っていけるだろう。直後の2回裏は三者凡退に抑え、その確信は一層強くなった。

 しかし、3回裏になると「悪い癖」が顔をのぞかせた。1死から西川龍馬に安打を許すと、菊池涼介の投ゴロを足に当ててしまい一、二塁。とはいえまだ「大ピンチ」というわけではない。2点のリードにも守られ、打席の小園海斗は打率1割台と低迷。本塁打を警戒する打者でもないのだから、大胆に攻めてもよかったはずだ。

 ところが岡野は冷静さを失っていた。初球を叩きつけたのが暴投となり二、三塁。さらに制球を乱してスリーボールとし、なんとか3-2まで立て直すも結局6球目が外れて四球。たちまち満塁となり、今度はまさしく「大ピンチ」を迎えることになった。

 戦前の「ストライク先行で攻めたい」という発言は、裏を返せばそれが自身の課題だと認識しているからこそ。そして今日のマウンド、この意気込みを実践するのはまさにこの場面、この対戦ではなかったのか。続くマクブルーム、坂倉将吾に連続タイムリーを浴びたところで無念の降板。28歳の岡野は違う! というところを見せて欲しかったが、課題を克服できずに “ほろ苦バースデー” となってしまった。

 おそらく今季の通例に基づいて、岡野は登録抹消となるだろう。次回登板はいつになるのか。待ち列は長いだけに、予測するのは難しい。ただ、必ず「次」は来る。その時までに課題と向き合い、今度こそ生まれ変わった姿を見せて欲しいものだ。

 結果的に後を任された5投手が内容の差はあれど「0」でタスキを繋いだだけに、3回裏に刻まれた「3」があまりにも重くのしかかった。相手も打つ気満々でバットを握っているのだから、打たれるのは仕方ない。そこをどうこう言うつもりはない。坂倉なんかピンチで抑えろって方がムリゲーだ。

 ただ、その前の小園に対しての消極的な投球。ここは明確に「岡野が負けた」といえる。打者にではなく、マツダが作る空気感、そして失点への過剰な意識に、である。

 28歳、そろそろピンチ恐怖症は卒業してもいい年ごろだ。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter

【参考資料】

【中日】岡野&福谷、2位浮上任せた!「自分も流れに乗れるように…」4連勝チーム勢いにあやかり好投誓う:中日スポーツ・東京中日スポーツ