ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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不思議の勝ちあり~大野雄大に対して右打者を並べた阪神の“ミス”

〇2-1阪神(1回戦:バンテリンドーム)

「勝ちに不思議な勝ちあり」とはよく言ったもので、まさしく常識では理解できないような、そんな1勝を立浪ドラゴンズは手にした。

 中盤まではエース対決にふさわしい手に汗握る展開だった。大野雄大、西勇輝ともに走者は出すものの得点は与えない粘りの投球で、両者どちらが先に崩れるのか。まったく予測のつかない投げ合いが続いた。こういうときのセオリーは、「ミスをした方が負ける」である。

 そして先にミスを犯したのは、守備が盤石なはずのドラゴンズ、それも名手・京田陽太だった。6回表、先頭の山本奏寛のなんでもないショートゴロを悪送球。クリーンアップへと繋がるところで無死一塁としてしまい、雲行きはにわかに怪しくなる。

 しかしミラクルが起きたのは、この次である。続く3番・近本光司のセカンドゴロはおあえつらえ向きの併殺コース。しかしこれを京田がまたしても悪送球してしまい、打者走者を生かす格好となった……かに思われたが、送球が逸れたのを見た近本が二塁を陥れようと疾走。これをカバーに入った木下拓哉が冷静に処理して二塁で刺し、きわめて変則的なダブルプレーを完成させたのであった。

 おもしろいプレーではあったが、「トリックプレー」などと持て囃すつもりはない。送球難はクセになる恐れがある。今回はたまたま上手くいったが、京田にその兆候があるとしたら、チームとしては一大事だ。まぁ、それはさておき。この局面に関しては素直にラッキーだと喜んでおこう。

 しかし走者がいなくなって大野も緊張が緩んだのか、4番・佐藤輝明には高めに浮いたスライダーを強引にスタンド最前列へと持っていかれ、先制点を許してしまう。

 まだ6回とはいえ西の調子的にも、得点が入りにくいバンテリンという点を考慮しても、ドラゴンズにとっては致命的ともいえる「1」がスコアボードに刻まれてしまった。6,7回裏は走者を出しながらも無得点に終わり、西攻略の糸口も掴めぬまま、このままのスコアでゲームセットを迎えそうな気配が漂い始める。

 だが、ここで二度目のミラクルが起きた。なぜか、阪神が西を降ろしたのだ。7回108球という球数からして、決しておかしな采配というわけではない。ただ、スアレスがいた昨年までならともかく、今季の阪神の低迷は9回を任せられるクローザーの不在に要因があるはずだ。

 であるならば、1点差での残り2イニングを暫定的な勝ちパターンで凌ぐというのは、いささか無理のある計算ではないか。しかも8回に出てきたのは、代役クローザーだったはずの湯浅京己である。そうなると、9回は誰に投げさせるつもりだったのか? 阪神のブルペン事情には詳しくないが、運用方針がかなりブレてしまっているのはよく分かる。そしてドラゴンズ側からみると、西を降ろしてくれたのは本当に助かった。

 勝負事のセオリーは、「いかに相手がイヤがる仕掛けができるか」だ。その意味で阪神の采配は、わざわざドラゴンズに追い風を吹かせてくれたと言わざるを得ない。

もし “大野対策” でこれでもかと左打者を並べて来られたら……

 勝負前、私は周りが言うほど楽な戦いにはならないだろうと身構えていた。相手先発が西というのもあるが、それ以上に大野の左打者との相性が気になっていたのだ。昨季、大野がサウスポーにはめずらしく左打者との対戦を極端に苦手にしていたのは有名だが、対策して臨んだはずの今季も右被打率.156に対して左被打率.364と、まだ2試合とはいえ偏った傾向が出ていた。

 当然、阪神だってこの程度のデータは持っているはずだ。そうでなくても阪神打線は大山悠輔、捕手を除いた野手6ポジションが左打者で埋まるという球界随一の左偏重打線である。大野が苦労しなければいいが--と心配すると共に、左打者への攻め方が今夜のポイントになるだろうと注目していたのだが、蓋を開けてみて驚いた。

 なんと2番に山本、7番に豊田寛と、今季無安打の右打者を二人も入れてきたのだ。それだけではない。大野自身が「ポイント」と警戒していた糸井嘉男をベンチに置いたことで、打線全体がかなりスケールダウンしたようにも見えた。敵ながら試合前に首をかしげてしまった不思議な起用法。もし “大野対策” でこれでもかと左打者を並べて来られたら、まったく違った展開になっていてもおかしくはなかった。

 逆転した8回裏も、ビシエドがあの当たりで二塁から生還できたのは奇跡に近いし、そのあと1死一、三塁で内野前進シフトを敷いてくれたのも助かった。とにかく幾つもの “不思議” が重なった1勝だが、勝ちは勝ち。たまにはこんな勝ち方も悪くない。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter

【参考資料】

“虎キラー” 中日・大野雄が12日先発「今年は大山選手、佐藤選手、調子が良い糸井さんがポイント」 | 東スポのプロ野球に関するニュースを掲載