ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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4発11得点!高橋宏斗プロ初勝利!一夜の夢のような強竜祭りは「未来」ではなく今だ!

〇11-3ヤクルト(3回戦:明治神宮野球場)

 上弦の月が輝く夜空の下、神宮球場に集まった熱心なドラゴンズファンは夢のようなひと時に酔いしれた。

「高橋宏斗プロ初勝利」という、それだけでも一生忘れられないメモリアルゲームだというのに、打つわ打つわで4ホーマー11得点。将来のエースの門出を祝うかのように、どこからでも点が入る “強竜打線” が火を噴いた。

 こうも見どころが多いと、どこから触れていいのかも分からない。贅沢な悩みだが、まず京田陽太の2連発は特筆すべきトピックスといえよう。何しろ昨日、打率0割台に突入し、当ブログでも「落ちるところまで落ちた。あとは這い上がるばかりだ」と祈るような気持ちで書いたばかり。場合によっては今季初のスタメン落ちもあり得る状況で、有言実行の立浪監督は今日も変わらず「8番・ショート」の定位置に京田を置いた。

 労働者にとって、ボスからの信頼が何物にも代えがたい発奮材料になるのは昔も今も同じである。ドン底に落ちてもなお、「ウチには京田しかいない」と公言する立浪監督の期待に応えなければ男じゃない。二度引き矯正の一本足打法に戻した今夜、昨季7タコと苦手にした石川雅規のスライダーをガツンと叩いてスタンドイン。

 戦況的にも大きな一発となったが、今夜はこれだけで終わらなかった。鬱憤を晴らすような2打席連発。京田が打てばもっと強くなるのに--というファンの歯がゆさを解消する活躍で、打率も一気に4分も上昇。シン・京田の始まりを予感させる夜となった。

昂弥の純粋さがこれから幾度となくチームを救うことになるのだろう

 試合展開のなかで最も大きかったのは、6回表に飛び出した先頭・石川昂弥の2号だろう。1点差に詰め寄られ、不穏な空気が漂い始めた矢先だっただけに、この一発はよく効いた。相手投手の状態がアレだったのもあるが、一振りで決めた石川がやはり素晴らしい。3年目にして待望の初本塁打を放ったおとといと同じく、ベンチ前でビシエドと熱い抱擁を交わすと、チームはお祭りムードに突入だ。

 思うに、喜びを全身で表現する石川の天真爛漫なキャラクターは、チームの雰囲気を変える力があるのではないか。続く京田が2者連発を打った際には、石川はベンチから身を乗り出しながら破顔一笑してガッツポーズ。競争社会をくぐり抜けてきた猛者たちの集まりであるプロ野球界において、これほど分かりやすく喜びが表に出る選手もめずらしい。

 あくまで推測だが、きっと鷹揚な家庭で育ったご子息なのだろう。嬉しいことがあった子供がその日寝るまで楽しそうに過ごすように、本塁打を打ったあとの石川はとにかく笑顔を絶やさず、守備に就くときまでニコニコと笑っているほどだ。擦(す)れていないというか、何というか。この純粋さがこれから幾度となくチームを救うことになるのだろう。「昂弥の笑顔が見たい」、心からそう思わせてくる選手である。

 

 最後になったが、今夜のヒーロー・高橋宏斗にも触れないわけにはいかない。多種多彩な変化球を駆使しつつ、150キロ超の真っすぐでガンガン攻める投球スタイルは、大野雄大や柳裕也をも凌駕するほどの圧倒的なスケールを感じさせる。この投手がひとつ間違えていれば(と言っていいのやらなんとやら)、大学野球の2年生で投げていたのかと思うと恐ろしい。

 最後のイニングだと落合コーチから事前に通告されていたという6回裏は、さすがに体力不足からかバラつきも目立ったが、オスナに対しては3ボールとしながらも真っすぐで追い込み、フィニッシュは得意のスプリットを完璧に落として空振り三振。最後の力を振り絞った、渾身のティーンエイジ・ライオットが決まった瞬間だった。

 まるで一夜の夢のような試合だったが、これが立浪ドラゴンズのデフォ。もう「未来を感じさせる試合」ではなく、今まさにその「未来」が到来したのである。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter