ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

MENU

不動の8番・京田陽太、なるか?打率0割台からの逆襲

●1-2ヤクルト(2回戦:明治神宮野球場)

「4番の差で負けた」とは落合博満が残した名言の一つである。

 1988年、中日対西武の日本シリーズ。星野監督率いるミラクル・ドラゴンズは1954年以来となる悲願の日本一に向けて、目下2連覇中の最強・ライオンズに挑戦。しかし結果は1勝4敗、「惨敗」ともいえる戦績であっけなく敗れ散ったのである。

 このシリーズで注目されたのが、中日・落合と西武・清原和博という両4番の存在だった。三冠王3度を誇るオレ流と、プロ3年目の若き主砲。シーズンでは互いに31本塁打と互角の成績を残した両者だったが、シリーズでは明暗がくっきりと分かれた。単打のみで打点0に終わった落合に対し、清原は3本塁打、4打点と大暴れ。特に第1戦で放った推定145メートルの場外アーチは、「東海道新幹線の高架壁に直撃した」とまことしやかに噂されるなど、インパクトの強い一発だった。

 この結果を受けて落合が敗因として語ったのが、上の一言である。「4番」とは、チームの勝ち負けの責任を背負って立つ存在なのだ、という落合なりの強烈な自負を感じさせる言葉だ。得点圏で回ってくる割合が最も高いとされる4番のバッティングは、チームの勝敗に直結する可能性が高い。

 近年のセ・リーグ王者をみてもヤクルト・村上宗隆、巨人・岡本和真、広島・鈴木誠也と、不動の4番が鎮座するのは偶然ではないだろう。それだけ4番は重い打順ということだ。

打率0割台……あっさりデッドラインを割ってしまった

 一方で、「8番」は一般的にチームで最も攻撃力の低い選手が座る打順だ。もちろん例外はあるにせよ、時として投手が8番を打つこともあるように、4番の重圧に比べればその期待値は限りなく低い。で、立浪ドラゴンズのここまでの11試合で実に10度、「不動の8番」を担っているのが京田陽太である。

 今日の試合前時点の打率は1割ちょうど。いくら守備型の選手とはいえ、レギュラーを張る以上はこの数字はさすがにマズい。そもそも「守備型」というのも近年の評価であって、ルーキーイヤーは攻走守そろったタイプとして新人王に輝いたのだ。

 “大型ショート” の名にふさわしい恵まれた体格で、あの中村紀洋コーチが「トリプルスリーを狙える」と豪語したポテンシャルの持ち主。多少のリップサービスを含んでいたとしても、このままで終わる選手ではないという認識は首脳陣全員が共有しているはずだ。それにしても、正直ここまでの不振に陥るとは想像していなかったのではないだろうか。

 なんとか0割台だけは回避したかったが、今夜も3タコ(1四球)であっさりとデッドラインを割ってしまった。これではチャンスを作っても8,9番を迎えた時点でお手上げだ。いわゆる「二度引き」改善に乗り出し、キャンプでは別人のような打撃フォームに挑戦したりもしたが、結局元のフォームに戻っているのも気になる。

 一方でヤクルトは、この日8番に入った伏兵・松本直樹に一発が飛び出し、最後までこの2点を死守して逃げ切きりに成功。今日に限っては「8番の差で負けた」という言い方ができてしまう。

 開幕直後とはいえ、レギュラー野手の打率0割台はそうお目にかかれる数字ではない。通常ならそろそろスタメン落ちも検討される頃合いだが、立浪監督は試合後うちのチームで143試合ショートで出られる体力があるのは京田しかいないと変わらぬ信頼を口にしたそうだ。

 木下拓哉の復調で、繋がりが生まれつつある竜打線。ここに京田がうまく絡めるようになれば、得点力不足にも一気に解決の算段が立つ。昨日の試合終了時、阿部寿樹が無安打に終わった京田の背中をポンと優しく叩いたのが印象的だった。首脳陣も、チームメイトも京田を見放す気なんてさらさら無い。

 明日もきっと夜空に響く「8番・ショート京田」のコール。落ちるところまで落ちた。あとはもう這い上がるだけだ。

木俣はようやっとる (@kimata23) | Twitter

【参考資料】

【中日】立浪監督「京田しかいない」打率1割”未満”にも信頼不変「自分で打破するしかない」:中日スポーツ・東京中日スポーツ